テレワークの普及なども重なり、急速に進められている働き方改革。
働き方改革によって労働者が働きやすい・働き方を選びやすい環境へと少しずつ変化してきているため、業種によっては生産性が向上しているケースもあります。
ですが、働き方改革の取り組みが行われているからこそ発生している問題点もいくつか存在します。
今回は、働き方改革の取り組みで発生する問題点について解説していきます。
働き方改革の概要について詳しく知りたい方は、別記事にて深くまとめていますので、そちらをご覧ください。
INDEX
働き方改革の問題
まずは働き方改革の取り組みで発生する問題についていくつか紹介していきます。
時間外労働の上限規制への対応
長時間労働であることを前提に業務をこなしていた場合は、確実に時間外労働の上限規制に対する対応が必要になります。しかし、いきなり業務体制を変更するだけでは業務自体は減らず支障をきたすことから、何らかの改善策をとる必要があります。
- ・業務内容の精査をして不要な業務量を減らす
- ・従業員を増やす
- ・業務効率化につながるサービスなどの導入を検討する
など。上限規制に対する対応方法は複数ありますが、解決のためには一定ののコストがかかります。
また、今回の働き方改革の取り組みによる時間外労働の上限規制は改善要請ではなく法的拘束力を持つ変更であるため、改善に取り組まなければいけないことはわかっているものの、業務量が減るわけではなくコストもかかることから、今すぐに改善をすることができない企業が少なくないのが現状です。
働き方改革における大きな問題点の一つといえるでしょう。
利益の減少
働き方改革は基本的に労働者の待遇改善・業務環境改善・多様な働き方の実現など、労働者寄りの内容が多くなっています。
そのため、何も対策せずに働き方改革の取り組みを行ってしまうと企業利益の減少につながってしまう可能性があります。
- ・時間外労働時間の削減
- ・積極的な有給休暇の取得指示
- ・テレワークへの移行
いずれの取り組みもしっかり検討を重ねてどの程度利益に影響するか想定した上で実施していかないと、利益の減少につながってしまう可能性があります。
ただし、働き方・職場環境の改善の取り組みを行うことで従業員の企業に対する評価が高まりやすくなるほか、十分な休養を取ることにより肉体的・精神的疲労の回復が見込めるため、総合的に判断すると生産性の向上につながり企業にとってプラスに働くことも考慮に入れて検討をする必要があるでしょう。
残業代の減少
残業してでも給料を増やしたいという方にとって、残業がしづらくなる働き方改革はあまり好ましく思っていない方もいるかもしれません。
そういう場合、残業できなくなったことによってできた時間を使って副業をして収入を増やせばいいのですが、副業を禁止している企業というのはまだまだ数多く存在します。
副業が解禁されている企業であれば関係ない話ですが、副業ができず在籍している企業での収入を増やすことが難しい環境にいる方にとって、残業できないことは給料減少に繋がりやすい問題でもあります。
度重なる最低賃金の引き上げ
最低賃金クラスのアルバイトやパートをしている方にとってはメリットが大きい最低賃金の引き上げですが、この最低賃金に引き上げは業種・職種・業務内容にかかわらず適用されるものであるため、誰でもできるような単純作業をアルバイト・パートに任せている企業にとっては大きな人件費増に繋がります。
この最低賃金の引き上げは毎年のように行われていますが、過去に韓国も同様の賃金引き上げ策を行い、失業率が大幅に増加した事例があります。
最低賃金を引き上げると労働時間を減らし、また雇用を減らす企業が出てくるため、無理な賃金引き上げはむしろ逆効果なのです。
引き上げ率は韓国ほどではないですが、最低賃金が一定ラインを超えるとアルバイト・パートで働ける方が少なくなる恐れがあるとして慎重な判断が求められています。
業務量が減るわけではない
働き方改革では時間外労働を減らす取り組みを行うことを求められていますが、時間外労働を突然減らすということは難しいことであり、仮に時間外労働を減らしたとしても業務量が減るわけではありません。
業務量を減らして対策するとしても売上高減少につながるため、今まで実施してこなかった新しい取り組み・イノベーションが必要になってくるでしょう。
多様な働き方とチーム一体感の両立
働き方改革を推進し、個々人の状況に合わせた多様な働き方が普及すると、社員同士が直接顔を合わせる機会が少なくなり、チームとしての一体感が薄れる懸念があります。
社員同士の関係が希薄になることで、業務の成果に悪影響が出るだけでなく、離職率も上昇する恐れがあります。
このような状況を避けるためには、会社のビジョンや各社員の期待される役割を明文化し、チーム全体が共通の目標に向かって協力する仕組みが必要です。
働き方の多様性を尊重しつつ、全体の連携を保つためのしくみを整備することで、より効果的な環境を整えることができるでしょう。
働き方改革の問題点の解決時に注力すべきポイント
働き方改革の取り組みを行う上で、企業は先ほど挙げたような問題に直面します。
そのため、ここからは損失を最小限に抑える・効率よく働き方改革の取り組みを実行していく際のポイントについていくつか紹介していきます。
現状の把握と課題の発見
自社で働き方改革を実施するためには、まず自社の現状を把握しておかなければなりません。
現状を把握せずに働き方改革の取り組みを進めてしまうと、売上の低下・職場環境の変化による労働生産性の低下・社内の士気低下などに繋がってしまいます。
そのため、自社の現状の把握とともに働き方改革を行う際に直面するであろう課題について洗い出しておくことが大切です。
事前に課題や問題点を洗い出しておくことで、いざ取り組みを実行に起こした時に軌道修正が難しいトラブルに遭遇するということが少なくなるので、働き方改革の取り組みによる社内環境の改善・生産性の早期向上につながりやすくなります。
特に時間外労働の原因になっているボトルネックの特定ができると働き方改革の問題点を解決しやすくなるでしょう。
ワークフロー・ロードマップの作成
働き方改革を進めるからといって、一気に労働環境・ワークフローを変えてはいけません。
突然業務環境を大きく変更してしまうと以下のリスクが顕在化します。
- ・労働生産性の低下
- ・情報伝達・共有の乱れ
- ・業務の大幅な遅延
長期的に見ると労働生産性の低下は許容できる損失になるかもしれませんが、報連相を含む情報共有の乱れ・新しいワークフローに慣れるまでの業務の遅延など、日々の業務にかかわる放置できない問題が発生してしまいます。
したがって、少しずつ慎重に働き方改革の取り組みを進められるようロードマップなどを作成するようにしてください。
少しずつ進めることで、顕在化した問題も一つずつ確実に対処できるでしょう。
テレワークにおいても同様です。例えば、テレワークに向いている業務を行っている社員をテレワークに移行し、実体験に基づく調査からテレワークにおける課題点などの洗い出し・解決をしていく、というようにスモールスタートで少しずつ進めていくことも大切です。
働き方改革に関する企業の具体的な施策
企業が実施した働き方改革の事例をいくつかご紹介します。
年休取得の推進:株式会社シマブン
株式会社シマブンでは、社員が年休を取りやすくなるよう、以下4つの取り組みを実践しました。
・社員が複数の業務をこなせる体制づくり
・業務マニュアルの策定
・スケジュール共有ツールの導入
・半日単位の有給休暇制度
部署内の人材を定期的に入れ替えるなどし、社員が異なる業務を柔軟にこなせる環境を整備しました。円滑な業務遂行を目標に業務マニュアルも作成し、業務の透明性を高めています。
これらの施策により、誰が休んでも業務をカバーできる環境を実現しています。また、社員全員の休暇予定を共有するため、スケジュール共有ツールを導入。半日単位の有給休暇制度も加わり、年休取得がより柔軟になりました。
変形労働時間制の導入:エンカレッジ・テクノロジ株式会社
エンカレッジ・テクノロジ株式会社では、感染症予防の一環として、従業員同士の接触機会を減らすため、変形労働時間制を取り入れました。
新たに導入された制度では、週休2日制に加えて週休3日(1日あたり9.375時間勤務)や週休1日(1日あたり6.25時間勤務)などの柔軟な労働時間の選択肢が提供され、従業員の働き方に対する柔軟性が向上しました。
どのスタイルも所定労働時間は同じであり、給与は変わりません。また、在宅勤務制度も併用可能です。
対面の機会が減ったことに対応し、適切な評価を行うための仕組みが新たに取り入れられ、従業員の役割と期待値も明文化されました。
参考:エンカレッジ・テクノロジ株式会社-働き方・休み方改革 企業事例
ITの活用による事務作業の効率化:有限会社タムカンパニー
有限会社タムカンパニーでは、ITの導入により事務作業の大幅な効率化を実現しています。
導入された主なITは以下の2つです。
・クラウド型給与計算システム
・勤怠管理システム
これまで給与は社内にて手作業で行われ、多くの時間がかかっていましたが、クラウド型給与計算システムの導入により計算の正確性が向上し、作業時間も大幅に削減されました。
また、給与明細の発行方法もスマートフォン経由に変更され、紙の印刷や配布業務が不要になりました。勤怠管理はこれまでタイムカードや出勤簿への記入で行われていましたが、勤怠管理システムによって、従業員のリアルタイムな勤怠状況の把握が可能になっています。
適切な勤怠管理が行えるようになった結果、有給の取得が促進されています。
参考:有限会社タムカンパニー-厚生労働省 (mhlw.go.jp)
働き方改革では慎重な取り組みが必要
働き方改革は、これまでの働き方を大きく変えるきっかけになる取り組みです。
長期的にみると企業・従業員ともに健全な働き方・働かせ方ができる環境へと変化していきますが、それ故に働き方改革の取り組みは企業・従業員ともに一定の負担を強いられることになります。
- • 時間外労働の管理
- • 給料減少に対する対策
- • 業務そのものが減るわけではない
- • テレワークへの移行コスト
給料などの利益の話も絡んでくるため現場手動だけでは難しく、逆に経営層のワンマン経営で乗り切れる問題ではありません。
まとめ
経営層・現場双方が互いに協力しあって初めて問題を解決した上で働き方改革を進められますので、自社が抱える問題・課題をしっかり洗い出して働き方改革を実施していくようにしましょう。
※記載している内容は、掲載日時点のものです
2023-9-20
2023-5-16
2024-4-24
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