
タレントマネジメントは、従業員の能力を最大限に発揮させる仕組みです。経営戦略と人材戦略を結びつけることで、組織全体のパフォーマンスを高め長期的な競争力を強化できます。
本記事では、タレントマネジメントの概要とメリット、成功のためのポイントを詳しく解説します。
INDEX
- 1.タレントマネジメントの概要
- 2.タレントの定義
- 2.1.個々人のもつ能力
- 2.2.優れたスキルをもつ人材
- 3.タレントマネジメントと従来の人事施策との違い
- 3.1.一貫した人材戦略/スキル習得機会
- 3.2.計画的なリーダー育成
- 3.3.高い従業員定着率
- 4.タレントマネジメントの発祥
- 5.タレントマネジメント導入のメリット
- 5.1.組織と個々人のパフォーマンスを最大化できる
- 5.2.長期的な競争力強化が可能
- 5.3.離職防止につながる
- 5.4.ローパフォーマーが他部署で成果を上げられる可能性
- 6.タレントマネジメントが重要視される背景
- 6.1.労働力不足
- 6.2.離職防止
- 6.3.リモートワークの普及
- 7.タレントマネジメントを実践するステップ
- 7.1.①長期的な経営戦略に基づいてどのような人材を求めているのかを検討する
- 7.2.②タレントの収集
- 7.3.③スキルの過不足確認と適正配置
- 7.4.④能力開発機会の提供
- 7.5.⑤現場の管理職による評価
- 7.6.⑥モニタリングと改善
- 8.タレントマネジメントを運用する上での注意点
- 8.1.従業員個人のキャリア志向に寄り添う
- 8.2.データベース構築が目的にならないようにする
タレントマネジメントの概要
タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりがもつ能力を活かし、組織全体のパフォーマンスを最大化するための人事施策です。経営戦略と人材戦略を連動させ、長期的に従業員のスキルを伸ばすことをめざします。
具体的には、各従業員スキル情報をデータベースで一元管理し、必要なスキルをもつ人材を見つけたり、保有スキルに合わせた配置転換を行ったりします。また、企業が必要としているスキルと現状とのギャップを把握し、長期的な育成計画を立てるのも大きな特徴です。

タレントマネジメントの主な目的は次のとおりです。
- ・長期的な競争力の強化
- ・経営者候補の早期発見と育成
- ・人材を最適に配置し、組織全体のパフォーマンスを向上させる
- ・従業員の定着率を高める
タレントの定義
タレントマネジメントでは、「タレント」を大きく2つの意味で捉えています。
1.個々人のもつ能力
1つ目は、従業員個々人がもつ能力です。業務をこなす中で身につけた後天的なスキルだけではなく、先天的な資質も含まれます。具体例として、次のようなものがあります。
- ・ヒューマンスキル(対人関係やコミュニケーション能力)
- ・行動特性
- ・問題解決能力
- ・経験(業績や評価など)
- ・特定分野の高い知見(資格や免許など)
2.優れたスキルをもつ人材

企業の競争力を高めるうえで重要な存在を指します。たとえば、経営幹部候補やリーダーシップを発揮できる人材などです。
タレントマネジメントと従来の人事施策との違い
従来の人事施策とタレントマネジメントとの主な違いは次のとおりです。
|
項目 |
従来の人事施策 |
タレントマネジメント |
| 人材戦略/ スキル習得機会 |
場当たり的 |
経営戦略と連動した 一貫性のある計画 |
| リーダーの育成 | 突然の退職で後任が 見つからない場合が多い |
次世代のリーダーを 計画的に育成 |
| 従業員定着率 | 低い |
高い |
一貫した人材戦略/スキル習得機会
タレントマネジメントでは経営戦略と人材戦略を連動させ、「いつ・どの部署で・どんな能力が必要になるか」を明確にするため、人材の配置や育成計画を一貫して進められます。
一方、従来の人事施策では配置転換や研修のタイミングが場当たり的になりやすく、社員の能力を十分に活かせない部署に配属されたり、計画性の乏しい研修が実施されたりするケースがあります。
計画的なリーダー育成
タレントマネジメントは、高い能力をもつ人材を早期に発掘して育成する仕組みです。そのため、突然の退職があっても後任をすぐに見つけやすいのが特長です。
一方、従来の人事施策では、リーダー候補を体系的に育成する仕組みが整っていないことが多く、重要なポジションの後任探しに苦労しがちです。
高い従業員定着率
タレントマネジメントでは一人ひとりのキャリア形成をサポートするため、従業員の満足度やモチベーションが高まり、離職率が下がる傾向があります。
一方、従来の人事施策では、将来のキャリアパスが見えにくい、あるいは希望しないポジションへの配属などの理由で離職につながるリスクが高まります。
タレントマネジメントの発祥
タレントマネジメントはアメリカで生まれました。アメリカでは転職を繰り返してキャリアを形成する文化が根付いており、特に優秀な人材が流出しやすい傾向にありました。
経営者にとって後継者の育成は大きな課題となっており、そこで注目されたのが「個人のキャリア形成を支援することで、優秀な人材を定着させる」というタレントマネジメントの考え方です。
当初は「優秀な人材の離職を防ぐこと」に重きを置いていましたが、近年では「あらゆる従業員を戦略的に活かす」方向へと進化し、幅広い社員層を対象とするアプローチに変わってきています。
タレントマネジメント導入のメリット
人事施策にタレントマネジメントを採用すると、次のようなメリットがあります。
組織と個々人のパフォーマンスを最大化できる

タレントマネジメントを活用すると、従業員は自分の能力に合ったポジションで働くことができるため、業務効率が高まり企業全体としての生産性が向上します。個人が持つスキルを最大限に発揮できる環境を整えることで、組織を最適化できます。
長期的な競争力強化が可能
経営戦略に基づいて必要なスキルを明確にし、その育成を計画的に行います。将来的に求められる人材をあらかじめ育成しておくことで、市場の変化に柔軟に対応できる組織体制を築き、長期的な競争力を高めることができます。
離職防止につながる
タレントマネジメントでは、一方的にスキルを押し付けるのではなく、従業員のキャリアプランに寄り添いながら能力開発をサポートします。個々人の意向を尊重する仕組みは、従業員の満足度を高め、離職率の低下にも寄与します。
ローパフォーマーが他部署で成果を上げられる可能性
適切なアセスメントと配置転換を行うことで、いわゆるローパフォーマーでも別の部署で高い成果を出す可能性があります。また、従来の業務とは全く違う仕事に挑戦させることで、本人も気づいていなかった才能を発揮するケースもあり得ます。
タレントマネジメントが重要視される背景
タレントマネジメントが注目される具体的な背景として、以下のポイントが挙げられます。
労働力不足
少子高齢化によって日本は慢性的な人手不足に陥っており、多くの企業が限られた人材で事業を運営せざるを得ない状況です。タレントマネジメントを導入することで、組織内にいる人材をより有効に活用できます。労働力不足への対応策としても期待されています。

離職防止
優秀な人材を採用しても、他社に流出してしまうリスクは常に存在します。タレントマネジメントでは個々のスキルやキャリア志向を重視し、従業員の成長を支援することでエンゲージメントを高めます。その結果、離職率の低下や転職市場での企業イメージ向上が見込まれます。
リモートワークの普及
リモートワーク環境下では、モチベーションや帰属意識を維持しにくく、対面で把握しやすかった従業員の能力や特性を把握するのが難しくなりがちです。タレントマネジメントの枠組みを取り入れることで、一人ひとりの能力やキャリア目標を可視化し、適切な配置や育成施策を実施しやすくなります。
タレントマネジメントを実践するステップ
タレントマネジメントを導入する具体的な手順を紹介します。
1.長期的な経営戦略に基づいてどのような人材を求めているのかを検討する
まず、企業の中長期的な目標を明確にしましょう。そして、その目標を実現するために必要な人材とポジション、その人物が持つべきスキルをリストアップします。
2.タレントの収集
1で定義したスキルを中心に、社員の能力に関する情報を集め一元管理しましょう。社員の能力に関する情報は、主に以下にあります。

- ・履歴書/職務経歴書
- ・適正結果
- ・業績/人事考課
- ・プロジェクト/研修参加履歴
- ・面談情報(各社員のキャリア志向)
3.スキルの過不足確認と適正配置
従業員が持っている能力を明らかにし、求められている能力と照らし合わせて足りているか不足しているかを把握します。
不足している場合は研修で能力を補い、新規採用や部署変更も検討します。スキルを保有している場合は、社員のキャリア志向に合わせて配置やプロジェクト参加を検討しましょう。また、優秀な従業員に対しては、経営者候補として特別な教育を施すなど長期目線で育成を行います。
4.能力開発機会の提供
従業員本人が自分の潜在能力に気づいておらず、企業側でも把握していないケースがあります。このような能力を引き出すためには、通常業務とは異なる新しい経験を提供することが効果的です。
- ・異動(部署内の役割の入れ替えを含む)
- ・研修
- ・ビジネスコンテストの実施
5.現場の管理職による評価
上司が定期的に面談を行い、キャリア志向やスキル開発目標の進捗確認、フィードバックを実施します。評価結果や最新のスキル情報は随時アップデートし、人事部門と共有しましょう。

6.モニタリングと改善
最新のスキルデータベースを基に、新たな能力開発機会の提供や、組織を最適化する異動を随時検討します。これまでのプロセスを繰り返し、将来的に必要とされるスキルとのギャップを着実に埋めていきます。
タレントマネジメントを運用する上での注意点
タレントマネジメントを運用する際は、次のポイントを意識して進めることが大切です。
従業員個人のキャリア志向に寄り添う
タレントマネジメントは、企業側から一方的に要求を押し付けるのではなく、従業員としっかりコミュニケーションをとりながら能力開発を進めます。本人の意思を無視するとモチベーションの低下や離職のリスクが高まるため、客観的なデータに基づき合意形成を図ることが重要です。
データベース構築が目的にならないようにする
従業員のスキルをデータベースにまとめることは不可欠ですが、それ自体がゴールにならないよう注意が必要です。
タレントマネジメントで本当に求められているのは、中長期的な経営戦略を踏まえたスキル育成や組織全体の最適化であり、データベースはあくまでそのための手段に過ぎません。組織の成長を促すことを常に意識し、PDCAサイクルを回しましょう。
まとめ
従業員一人ひとりの能力を活かすことは、労働力不足に直面している企業にとって必須の課題です。タレントマネジメントを導入すれば、人材を最適に配置して離職率を下げるだけでなく、将来必要となるスキルをもった人材を計画的に育成できます。導入を検討する際は、まず企業の中長期目標を明確にすることから始めましょう。
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