
Society 5.0は、政府によって2016年に提唱された未来社会のモデルです。本記事ではSociety 5.0の内閣府における定義について、簡単にわかりやすく解説します。
INDEX
- 1.Society 5.0とは
- 2.「サイバー空間とフィジカル空間の高度な融合」とは
- 2.1.各分野のシステムが連携する
- 2.2.すべての人とあらゆるモノがつながる
- 2.4.情報分析にはAIが使われる
- 3.「社会的課題を解決しながら経済発展も実現」とは
- 3.1.課題解決の具体例
- エネルギー分野
- 食料(農業)
- 長生き(医療・介護)
- 4.「すべての人々が活き活きと暮らせる(人間中心)」とは
- 5.Society5.0に関する政府の取り組み
- 5.1.医療(統合型ヘルスケアシステムの構築)
- 医学知識の発見
- 医療現場と患者生活の支援
- 地域医療支援
- 5.2.食料生産(豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築)
- 大豆の栽培技術確立
- 水産物の次世代養殖技術確立
- 肥料の国内生産
- 6.Society5.0に活用されるICT技術
- 6.1.センシング(IoT)
- 6.2.モバイルネットワーク
- 6.3.AI(人口知能)
- 画像解析
- 予測
- 仮想環境でのシミュレーション
- 7.Society5.0の後に訪れるSociety6.0とは
Society 5.0とは
Society 5.0は、日本が将来めざすべきとされる社会モデルです。
簡単にいうと、AIをはじめとした最先端のテクノロジーが世の中に行き渡ることにより、社会課題の解決と経済発展を両立した社会です。
これまでの社会をSociety1.0~4.0と定義し、Society 4.0に続く新しい社会としました。
・狩猟社会(Society 1.0)
・農耕社会(Society 2.0)
・工業社会(Society 3.0)
・情報化社会(Society 4.0)
内閣府のWebサイトでは、Society 5.0を次のように定義しています。
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)
ここでは上記の定義を以下の3つのパートに分け、くわしく解説します。
- ・サイバー空間とフィジカル空間の高度な融合
- ・社会的課題を解決しながら経済発展も実現
- ・すべての人々が活き活きと暮らせる(人間中心)
「サイバー空間とフィジカル空間の高度な融合」とは
「サイバー空間とフィジカル空間の高度な融合」は、「情報収集・分析・フィードバックの送信」のサイクルが、分野や業種を超え、社会規模で行われる状態です。
ここでは、現在(Society 4.0)とSociety 5.0のしくみにおける違いから、Society 5.0のシステムについて解説します。
Society 4.0とSociety 5.0の違い
各分野のシステムが連携する
これまでの社会では、ユーザーは入手したい情報ごとにアプリを起動し検索する必要がありました。
なぜならサービスごとに、アプリが独立しているからです。
たとえば電車の運行情報を調べたいときは、鉄道会社のアプリを確認します。タクシーを手配したいときは、タクシー会社のアプリを起動する必要があるでしょう。

知りたい情報を得るために、いくつものアプリケーションにアクセスしなければなりません。
Society 5.0の社会では、業種や分野を超えてアプリが連携し、ユーザーはワンストップで情報を入手できるようになります。
たとえば、下記のような社会を支えるシステムが相互に接続され、連携します。
・物流
・防災
・金融
・教育
・医療
・交通
・行政手続
・社会福祉
社会を支えるあらゆる業界のシステムをつなぐことで、よりよい社会を築けるようになります。
たとえば災害時を考えてください。
これまではインフラの損傷状況や交通網、避難所などの情報が、自治体や民間企業等に分散されて管理されていました。
これらの分散されていた情報がサイバー空間で一元管理され、かつリアルタイムで更新されます。
災害復旧に関わる人たちや被災者などが、必要なときに必要な情報へアクセスできるようになります。
すべての人とあらゆるモノがつながる
Society 5.0では、すべての人とあらゆるモノがサイバー空間に接続します。
環境情報や機器の作動状況、人の情報などがセンサーを介して自動的に収集され、サイバー空間に蓄積されていくでしょう。
収集された情報はAIによって解析され、さまざまな形でフィードバックされます。
情報分析にはAIが使われる
Society 5.0では、多数のシステムとセンサーにより、サイバー空間に莫大なデータが蓄積されます。
これらのデータは、これまでのものに比べると非常に巨大なものなので、人間ではとうてい扱いきれません。
そこでAIが使われます。
収集されたビッグデータをAIが学習することで、将来のシミュレーションが行われ、全体最適となる新たな提案が生み出されます。
人は自分で判断することが少なくなり、AIから提案を受ける機会が増えるでしょう。
AIは人間が見落としがちな「つながり」を発見することに長けています。これまでにはなかったイノベーションが生まれるかもしれません。
多数の分野のデータを横断的にAIが分析することで、全体最適化された、超スマート社会が実現するでしょう。

「社会的課題を解決しながら経済発展も実現」とは
内閣府が掲げるSociety 5.0の定義のなかに、「社会的課題の解決と経済発展の両立」があります。
そもそも社会的課題の解決と経済発展を両立させることは、非常に難しいものです。この困難な問題をテクノロジーで達成しようとするのが、Society 5.0です。
主として次の2つの手段によって、課題の解決を目指します。
・それぞれの分野において関連するさまざまな情報をAIで解析し、全体を最適化
・ロボットの活用
なおロボットは、主に人手不足の解消のために活用されます。
課題解決の具体例
3つの分野について、AIが解析する情報とその効果、解決する社会的課題をまとめました。
AIが解析する情報と解決する社会的課題の例
エネルギー分野
エネルギー分野では、各発電所の運転状況や各家庭の電力の使用状況、天候情報などが収集され、AIが分析します。AIの分析に基づき、電力供給が最適化されます。
エネルギー分野のシステム全体が最適化することにより、安定的なエネルギー供給が実現し、温室効果ガスの削減も望めるでしょう。
食料(農業)
農業の分野では、市場情報や食のトレンドを分析することにより、消費者ニーズに合わせて収穫量を設定できるようになります。
消費者ニーズに合わせた生産が可能になり、食品ロスの問題が解消されるでしょう。
またドローンにより収集された生育情報と、天気や河川情報をAIが分析。さらにロボットトラクタやスマート田植え機などのロボットも活用されます。
人手不足の問題が解消され、経験が少なくても高品質な生産が行えるようになるでしょう。
長生き(医療・介護)
医療分野では、スマートウォッチを介し、患者の日々の健康データがサイバー空間に蓄積されます。病気を早期発見できるようになり、健康が促進されるでしょう。
また医療データが共有されることにより、救急車で運ばれたときも、医療者が過去の医療データにアクセスできるようになります。最適な治療を受けられるとともに、医療現場での人的な負担も減らせます。
医療・介護現場ではロボットによる支援を受けられるようになり、人手不足が解消されるでしょう。
健康が促進されるとともに、医療・介護費のコストも削減できるとしています。
「すべての人々が活き活きと暮らせる(人間中心)」とは
これまでの社会では、技術が社会を発展させてきました。
Society 5.0では、「人間が幸せな生活を送る」ことに焦点を置くとしています。
Society 5.0が実現した社会では、AIがあなたの代わりに情報を取得して分析し、最適な提案をしてくれます。
人は煩雑な作業から開放され、創造性のある仕事に専念できるようになるでしょう。
またこれまでよりも失敗することが格段に少なくなり、安全・快適に暮らせるようになります。
これらの恩恵は、年齢や性別に関係なく、等しくすべての人が受けられるとしています。
Society5.0に関する政府の取り組み
政府が進めているSociety5.0の取り組みについて見ていきましょう。
内閣府が主導し、各省庁、産業界、学術界と連携して進められている「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では、社会課題の解決を目指してさまざまなプロジェクトが進行中です。
ここでは、SIP第3期(2023年度~2027年度)のプロジェクトの中から、2つの具体的な例を紹介します。
医療(統合型ヘルスケアシステムの構築)
医療分野では、患者・医療現場・学術界(医学者)・行政・産業界に分散されている情報を共有し、それらの情報から知見を得るためのプラットフォームを構築することを目指しています。
このプラットフォームの構築によって得られる効果は、以下の3つです。
医学知識の発見
産業界や学術界が医療現場の情報を取得できるようになることで、新薬の開発や新たな治療法の発見が期待されます。
医療現場と患者生活の支援
患者は、自身の健康状態の過去の履歴をプラットフォーム上で確認できるようになります。
また、ウェアラブルデバイスを用いたバイタルデータ(血圧、脈拍など)も電子カルテに統合され、医療者はそのデータを活用して診断を行うことができます。
さらに、これらの医療データがAIによって分析されることで、最適な医療が提供されるようになるとのことです。
地域医療支援
自治体が医療現場のデータを取得できるようになることで、医療資源の最適な配置が可能になります。
参考:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 統合型ヘルスケアシステムの構築 社会実装に向けた戦略及び研究開発計画
食料生産(豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築)
食料生産分野では、情勢不安定化による輸入食料・飼料の高騰や、異常気象による生産の不安定化が課題です。これらの課題に対し、以下の取組が行われています。
大豆の栽培技術確立
植物性タンパク質である大豆の収量を増加させるために、各地域の栽培環境に適した栽培技術を確立します。また、肥料や農薬の使用量を大幅に減らし、環境への負荷を低減する「環境再生型農業」の普及を加速させることを目指します。
水産物の次世代養殖技術確立
ICT技術やAIを活用し、餌やりや健康状態の監視を無人で行える次世代の養殖システムを開発します。これにより、養殖が省人化され、動物性タンパク質の収量を効率的に増やすことが可能になります。
肥料の国内生産
下水汚泥や家畜排泄物など、これまで利用されていなかった資源から肥料を作るための技術を開発します。
参考:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築 社会実装に向けた戦略及び研究開発計画
Society5.0に活用されるICT技術
Society5.0に活用されるICT技術について紹介します。
センシング(IoT)
センシングとは、さまざまなセンサーを用いて周囲の環境や状況をデータとして収集する技術です。
センシングにより、物理的な世界から大量のデータを取得することが可能になり、データ駆動型の社会を実現できます。それまで人手を使って収集していた作業を省略でき、省人化を図ることも可能です。
たとえば、農業分野では、水田センサーを設置することで、スマートフォン上で水田の水位や水温をリアルタイムで確認することができます。さらに、給水装置と連動させることで遠隔地から水深を自由にコントロールできるようになり、水管理の労力を軽減できます。
モバイルネットワーク
センサーは野外に設置されることが多いため、主に5Gや4G LTE、LPWAN(低電力・低容量の通信方式)などの移動体通信サービスが使われます。これらの通信サービスは、固定回線とは異なり、場所を問わずにネットワークに接続できる点がメリットです。
AI(人口知能)
AIは人間の知能のような機能をもった機械であり、学習や推論、認識、判断などを行います。Society5.0においては、次のような用途に使われます。
画像解析
カメラで撮影した画像や動画を解析し、分析や異常の検知を行います。
たとえば、農業分野では、圃場の画像から生育状況のばらつきを分析できます。これにより、育成状況ごとに施肥量を調整でき、収量の安定化と環境負荷の低減につながります。
予測
AIは過去のデータを基に予測を行うことができます。
たとえば、観光地における交通量や混雑状況の過去のデータを学習することにより、将来の混雑タイミングを予測できます。これにより、観光客に混雑の見通しをあらかじめ提示できるようになり、観光地の過密を防ぐことができます。
仮想環境でのシミュレーション
AIは仮想環境でのシミュレーションも得意であり、現実世界で行うのに比べてコストが安く済む点がメリットです。
たとえば、都市計画では、収集したビッグデータを用いて都市のデジタルツインを作成し、災害対策などのシミュレーションを行うことで、多様なシナリオを試すことができます。
Society5.0の後に訪れるSociety6.0とは
Society6.0についての明確な定義はありません。しかし、サイバー空間と現実世界が高度に融合したSociety5.0を実現した後は、完全な自動化を目指す社会が訪れると考えられます。
この社会では、工場、農業、物流、サービス業などの多くの分野が自律的に運営され、現在よりもごくわずかな人手で運営できるようになるでしょう。
また、業務だけでなく、家事や移動、介護、買い物などの個人的な活動についても、自動化の恩恵を受けることが期待されます。
まとめ
Society 5.0の実現に向けて、政府や大学、民間企業等で、業種ごとにさまざまな取り組みがなされています。 分野ごとに開発が進み、将来はそれらのシステムが連携していくと思われます。
※記載している内容は、掲載日時点のものです




