
ロボットやAI、IoTなどの最先端技術が導入されることで、農業の生産現場は大きく変化し始めています。労働力不足や高齢化、環境への配慮といった課題に対して、スマート農業は有効な解決策になり得ると期待されています。
本記事では、スマート農業の定義や活用される主な技術、具体的な事例についてわかりやすく紹介します。
INDEX
- 1.スマート農業とは
- 1.1.アグリテックとの違い
- 1.2.農業DXとの違い
- 2.スマート農業が求められる理由
- 2.1.労働力不足
- 2.2.高齢化
- 2.3.環境保全
- 3.スマート農業の主な技術
- 3.1.ロボット
- 3.2.ドローン
- 3.3.アシストスーツ
- 3.4.IoTセンサー
- 3.5.AI
- 3.6.生育管理支援システム
- 4.スマート農業のメリット
- 4.1.作業効率化・省人化
- 4.2.生産性・品質向上
- 4.3.環境負荷軽減
- 5.スマート農業のデメリット
- 5.1.導入コストが高い
- 5.2.スマート農業に適した環境整備が必要
- 5.3.技術の習得が必要
- 5.4.通信環境の構築
- 6.スマート農業の活用割合
- 6.1.全体の27.7%がスマート農業を活用
- 6.2.団体経営体の62.8%はスマート農業を実施
- 7.スマート農業の活用事例
- 7.1.イチゴ収穫ロボット
- 7.2.データ分析による収量アップ
スマート農業とは
スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどの先端技術を農作業に取り入れ、作業の効率化・省力化や農産物の品質向上・生産性アップ、さらには環境負荷の軽減をめざす新たな農業のスタイルです。
具体的には、次のようなことが行われています。
- ・ドローンで作物や土壌の状態を調べ、必要な場所にだけ肥料を散布する
- ・自動運転トラクターを使って、耕うんや播種、収穫を効率的に行う
- ・AIを活用して作物の画像を解析し、病害虫の発生を早期に発見する
日本では、高齢化や人手不足といった課題を解決するため、スマート農業の導入が積極的に進められています。

アグリテックとの違い
アグリテックは農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)をかけ合わせた造語で、「農業に関わる技術革新」を意味します。生産から流通、販売に至るまで幅広いプロセスを対象とする点が特徴です。
一方で、スマート農業は生産現場に主眼を置いているため、両者は取り組む領域に違いがあります。
農業DXとの違い
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単なるIT化にとどまらず、デジタル技術を活用してビジネスモデルそのものを変革することを指します。
農業DXでは、生産現場から流通・販売、経営、消費者向けサービスなど、農業に関わるあらゆるプロセスをデジタル化し、ビジネスの形を根源的に再定義するのが特徴です。スマート農業は、こうした農業DXの中でも、生産現場に特化した取り組みといえます。
スマート農業が求められる理由
スマート農業の導入が注目されている背景として、上げられる主な要因を見ていきましょう。
労働力不足
2015年から2020年にかけて、基幹的農業従事者は約39万人も減少しています。農業に携わる人が減ることで、深刻な労働力不足が生じているのが現状です。
| 調査年 | 基幹的農業従事者の数 | 増減 |
|
2015年 |
1,756,768人 |
– |
|
2020年 |
1,363,038人 | ▲393,730人 |
※基幹的農業従事者:ふだん仕事として主に自営農業に従事している人
出典:農林業センサス 農林業センサス累年統計 農林業センサス累年統計-農業編-(明治37年~令和2年) 長期累年 2020年 | 政府統計の総合窓口 年齢別基幹的農業従事者数
限られた人手で生産性を維持するためには、スマート農業による効率化が強く求められます。
高齢化
農業従事者の約70%が65歳以上となっており、若年層(49歳以下)の割合は横ばいで推移しています。高齢化の進行が続くと、農業の持続性に大きなリスクが生じます。
| 調査年 | 65歳以上 | 49歳以下 |
|---|---|---|
| 2015年 | 64.9% | 9.9% |
| 2020年 | 69.6% (+5.3ポイント) |
10.8% (+0.9ポイント) |
※()内は増減したポイント
出典:農林業センサス 農林業センサス累年統計 農林業センサス累年統計-農業編-(明治37年~令和2年) 長期累年 2020年 | 政府統計の総合窓口 年齢別基幹的農業従事者数
日本の農業を持続的に発展させるには、若年層の確保と定着が欠かせません。収益性や労働環境を改善するスマート農業は、若い人材の参入を促すうえで重要な役割を担っています。
環境保全
SDGsや持続可能性が社会全体で重視されるなか、農業においても環境への配慮が求められています。農薬や化学肥料を最小限に抑えることで、生態系への影響を軽減し、土壌を健全に保ちながら持続的な生産が可能になります。
こうした「減農薬・減化学肥料」への取り組みでは、スマート農業の先端技術を活用し、必要な場所・量だけを的確に管理することがポイントです。技術によって最適化することで、環境保全と生産性向上の両立ができると期待されています。
スマート農業の主な技術
スマート技術で活用される主な技術を紹介します。
ロボット

ロボットを活用すると、作業の自動化によって生産者の負担を軽減し、省力化が期待できます。
主な種類は次のとおりです。
- ・ロボット農機:無人で圃場を自動走行し、耕うん・施肥・播種などを行う
- ・収穫ロボット:果物や野菜を傷つけずに自動収穫する
- ・掃除ロボット:残渣(収穫後に残る茎や葉など)を集める
- ・自動選果ロボット:果実を規格ごとに選別し、箱詰めする
- ・運搬ロボット:障害物を避けながら、自動で収穫物を運ぶ
ドローン
ドローンは上空からの視点を活かして、作業の効率化や圃場管理の精度向上に役立ちます。
- ・肥料・農薬散布:ドローンで農薬や肥料を散布し、労力を軽減する
- ・圃場センシング:カメラやセンサーを搭載し、作物の生育状況や病害虫・雑草の発生状況を正確に把握する
アシストスーツ
アシストスーツは、農作業時の肉体的負担を軽減するための装着型機器です。
- ・重量支援:重量物の上げ下ろしをサポートし、労災リスクを減らす
- ・高齢者や女性の就労支援:肉体労働の負担を軽減することで、人手不足の解消にもつながる
IoTセンサー
圃場やハウス内の環境情報(温度、湿度、日射量、土壌水分、土壌養分など)をリアルタイムで取得し、状況に応じた環境制御を可能にします。データをもとに、作物のポテンシャルを最大限に引き出せます。

AI
AIは収集したデータを分析し、最適な栽培管理や意思決定をサポートします。
- ・病害虫の早期発見:画像データを解析し、不慣れな生産者でも病害虫を早期に発見
- ・最適な栽培管理の提案:センサーやドローンから得たデータを解析し、施肥や灌水のタイミングをアドバイス
- ・収穫予測:過去のデータをもとに収穫時期や量を予測し、最適な労力配分を実現
生育管理支援システム

栽培計画や進捗状況を一元的管理できるシステムです。タブレットやスマートフォンを通じて、誰がいつ、どこで、何をしたかを確認でき、作業を効率化できます。
スマート農業のメリット
スマート農業を導入すると、次のメリットがあります。
作業効率化・省人化
ロボットやドローン、アシストスーツを使えば、重労働を大幅に減らせます。こうした技術を取り入れることで、従来よりも少ない人数で生産性を維持できます。人手不足の解消や労災のリスク低減にも期待できます。
生産性・品質向上
センサーが収集した環境データをAIで分析し、最適な施肥や灌漑のタイミング・散布量などを割り出せます。作物に合った環境を整えられるため、収量の増加や品質向上が期待できます。
環境負荷軽減
農薬や肥料を必要な場所・必要な量のみ使うことで、水資源や周辺環境への影響を最小限に抑えられます。さらに、環境に配慮した持続可能な農業を実現することで、作物により高い付加価値をもたせることができます。
スマート農業のデメリット
スマート農業には多くの利点がある一方で、以下のようなデメリットも考えられます。
導入コストが高い
ロボットやセンサー、AIなどの機材やソフトウェアを導入するには、大きな資金が必要になる場合があります。ただし、近年では収穫量に応じて料金を支払うサービスや作業代行サービスも登場しており、機材を購入しなくてもスマート農業を利用できる選択肢が広がりつつあります。
スマート農業に適した環境整備が必要
スマート農業の効果を最大限に引き出すには、機械が通れるよう畝間(うねま)を広げる、品種を変更するなど、圃場をスマート農業向けに改良する必要があります。こうした事前準備にはコストや時間がかかります。
技術の習得が必要
新たな機器やシステムを導入すると、その使い方を学ぶ必要があります。スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器に慣れていない世代にとっては、こうしたスキルの習得が大きな負担になる場合があります。
通信環境の構築
多くのスマート農業システムでは、インターネットを介してデータをやり取りするため、安定した通信環境が欠かせません。4G LTE回線が使えないエリアでは、光ファイバの敷設や自営無線基地局の設置など別途通信環境を整備する必要があり、その分コスト負担も発生します。
スマート農業の活用割合
ここでは、農業経営体がどの程度スマート農業を導入しているのかを、最新の調査結果をもとに紹介します。
全体の27.7%がスマート農業を活用
農林水産省「令和6年農業構造動態調査結果」によれば、データを活用した農業を行っている農業経営体は、全体の27.7%です。前年比で1.6ポイント増加しており、今後もさらなる普及が期待されています。
<データを活用した農業を行っている農業経営体>
|
回答 |
割合 |
前年比 |
| データを活用した農業を行っている |
27.7% |
+1.6ポイント |
| データを活用した農業を行っていない |
72.3% |
-1.6ポイント |
出典:令和6年農業構造動態調査(令和6年2月1日現在):農林水産省 表4
団体経営体の62.8%はスマート農業を実施
農事組合法人や株式会社などの「団体経営体」におけるスマート農業導入率は62.8%と、個人経営体の26.0%に比べてかなり高くなっています。規模の大きさや資金力の違いが要因の一つと考えられます。
|
回答 |
個人経営体
(総数842万3千) |
団体経営体
(総数40万9千) |
| データを活用した農業を行っている |
26.0% |
62.8% |
| データを活用した農業を行っていない | 72.3% |
37.2% |
出典:令和6年農業構造動態調査(令和6年2月1日現在):農林水産省 表4
スマート農業の活用事例

ここでは、スマート農業において具体的にどのような技術が使われ、どのようなメリットが得られているのか、その事例を紹介します。
イチゴ収穫ロボット
九州のシステム企業が、複雑な手作業が多いイチゴの収穫を自動化するロボットを開発しました。
<イチゴ収穫ロボットの特徴>
- ・ハウス内を自動で走行
- ・AIが収穫に適したイチゴを判別
- ・イチゴを傷つけずに収穫
このロボットを使うことで、収穫作業にかかる時間を約60%削減し、従来よりも約4日間長く鮮度を保てるとのことです。
出典:【日本初の技術】福岡県久留米市発のいちごのAI自動収穫ロボット「ロボつみ(R)」。クラウドファンディングで3,160万円資金調達成功。 | 株式会社 アイナックシステムのプレスリリース
データ分析による収量アップ
ある生産者グループでは、ハウス内の環境を計測できるモニタリング機器を導入し、収量の多いメンバーの栽培環境をモデル化しました。
各ハウスがモデル化された環境データと自分のハウスを比較しながら栽培管理を実施した結果、収量を増やすことに成功しました。
まとめ
スマート農業は、労働力不足や高齢化などの課題解決に大きく貢献すると期待されてます。導入コストなどのハードルはあるものの、実際に導入した事例では作業効率や収量の向上など多くのメリットが報告されていました。今後さらなる技術開発が進むことで、より多くの生産者がスマート農業の恩恵を受けられるようになるでしょう。

とは?基礎知識や進め方、成功事例をわかりやすく解説!-1024x288.png)


