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働き方改革関連法とは?法改正のポイントをわかりやすく解説

2021-9-13

働き方改革関連法とは?法改正の目的や改正された法律の概要を解説

2018年に成立、順次施行されている働き方改革関連法。

働き方改革を進めるにあたり、現行の法律では進めることができない項目に関する法改正を行うものが働き方改革関連法となっており、非常に影響力の大きい法改正です。

今回は働き方改革関連法について、どのような改正が行われたのか解説します。

 

働き方改革関連法とは

「働き方改革関連法」、正式名称を「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律」と言います。

2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行されている法改正を主な内容とした法律で、労働基準法・労働安全衛生法・労働派遣法など労働における様々な法律が改正されています。

例えば時間外労働の上限規制や有給取得率を改善するための法改正などが働き方改革関連法に含まれています。

法改正の目的

働き方改革関連法では様々な法律に改正が加えられています。

この法改正は、主に以下の問題を解決するために施行されました。

  • ・少子高齢化による労働人口の減少
  • ・減少しない長時間労働・過労死問題
  • ・正規雇用・非正規雇用における待遇格差
  • ・有給取得率の改善
  • ・柔軟に働き方を選べる環境の整備

働き方改革関連法とは?法改正の目的や改正された法律の概要を解説‗法改正の目的

改正された法律の概要

働き方改革関連法の法改正のポイントは以下の8項目です。

  • ・時間外労働の上限規制を導入
  • ・年次有給休暇の確実な取得
  • ・中小企業の月60時間超の残業の割増
  •  賃金引き上げ
  • ・フレックスタイム制の拡充
  • ・高度プロフェッショナル制度の創設
  • ・産業医産業保健機能の強化
  • ・勤務間インターバル制度の導入促進
  • ・正規雇用労働者と非正規雇用労働者
  •  の間との不合理な待遇差の禁止

時間外労働の上限規制を導入

日本では長年長時間労働が問題視され続けていましたが、根本的な要因として法律上残業時間の上限が存在しないことが原因の一つに挙げられていました。

その時間外労働において上限を定めて法的拘束力を持たせることが働き方改革関連法にて施行されています。

具体的には以下の上限規制が行われました

  • ・年間時間外労働720時間以内
  • ・複数月(最大6ヶ月)の平均時間外労働時間80時間以内
  • ・月間時間外労働100時間未満

 

上記の上限規制は休日労働を含みます。

ただし以下の職業や事業に対してはまだ適用されておらず、2024年4月1日から適用される予定です。

 

    • ・建設事業
    • ・自動車運転の業務
    • ・医師
    • ・鹿児島・沖縄における砂糖製造業
    •  (年間時間外労働720時間以内は既に
    •  適用)

     

    また、新技術・新商品の研究開発業務では医師の面接指導・代替休暇の付与などの健康確保措置を受けた上であれば時間外労働の上限規制は適用されません。

働き方改革関連法とは?法改正の目的や改正された法律の概要を解説_時間外労働の上限規制を導入

年次有給休暇の確実な取得

企業に雇用されてフルタイムで勤務している方は、勤続年数に合わせて年次有給休暇を10日以上付与されます。

有給休暇について、年10日以上有給休暇を与えられた場合、最低5日は有給を使わなければいけないということが法律に追加されました。

有給休暇を満足に使用できていない・使いたくても使えない方が多いことが問題視されていましたが、この法改正によって有給休暇の取得が義務化されたため有給を取得しやすくなっています。

働き方改革関連法とは?法改正の目的や改正された法律の概要を解説‗年次有給休暇の確実な取得

中小企業の月60時間を超える残業の割増賃金引き上げ

働き方改革関連法によって中小企業における月60時間を超える時間外労働に対して割増賃金の割増率が25%から50%に変更されます。

従来は大企業にのみ適用される割増率でしたが、今回の法改正によって中小企業も同様の割増賃金対応が必要になりました。

この改正は2023年4月1日に施行されます。

フレックスタイム制の拡充

フレックスタイム制度の労働時間の調整可能期間(精算期間)が1ヶ月から3ヶ月まで延長できるようになりました。

これにより月をまたいだ労働時間の調整が可能となることから、更に労働時間を効率的に配分することができ、ワークライフバランスの取れた生活を送れることにより企業への定着も見込めることから、企業もフレックスタイム制度を採用しやすくなっています。

こちらの制度は2019年4月1日に施行済みです。

高度プロフェッショナル制度の創設

働き方改革を進めるにおいて高度プロフェッショナル制度の創設も促されました。

高度プロフェッショナル制度とは、収入や職種などの指定された条件に合致した場合に限り、労働時間などの制約が撤廃される制度です。

働き方改革関連法で制限される時間外労働の上限時間が適用されないなどのデメリットもありますが、導入条件が非常に厳しく労働委員会などで決議を通過しないと導入することができず、本人間との同意だけでは導入できない制度となっています。

産業医・産業保健機能の強化

産業医が業務に当たりやすいように、労働者の健康管理のため必要な情報を産業医に提供することなどが事業者に求められるようになります。

また、産業医の勧告を受けた事業者は、遅滞することなく勧告内容などを衛生委員会などに報告する義務なども追加され、産業医の立場が確立されるようになりました。

さらに、長時間労働者に対する面接指導などのフローに関しても、以下のように6工程において新規追加・拡充が加えられました。

 

1.    事業者が管理監督者や裁量労働者の適用者を含めすべての労働者の労働時間の状況を把握
2. 【拡充】事業者が産業医に時間外・休日労働時間がの労働者の情報を提供
【新規】事業者は時間外・休日労働時間が月80時間超の労働者本人に労働時間の情報通知
3.  【拡充】時間外・休日労働時間がの労働者が事業者に面接指導の申出
4.    事業者が産業医などによる面接指導を実施
5.    事業者が産業医などから労働者の措置などに関する意見を聴く
6.    事業者が産業医などの意見を踏まえて必要な措置を講じる
7.  【新規】事業者が産業医に措置内容を情報提供
8.  【新規】勧告を行う場合は産業医が事業者からあらかじめ意見を求める
9.    産業医が労働者の健康を確保するために必要があると認められる場合は事業者に勧告
10.【新規】自動車が産業医の勧告の内容などを衛生委員会などに報告

これらの産業医・産業保健機能の強化に関する法改正は2019年4月1日に施行済みです。

働き方改革関連法とは?法改正の目的や改正された法律の概要を解説‗産業医産業保健機能の強化

勤務間インターバル制度の導入促進

働き方改革関連法で勤務間インターバル制度の導入の促進も行われました。

勤務間インターバルとは、終業してから次の始業までの時間のことで、次の始業まで一定時間以上の休息時間の確保を行わなければならないようになっています。

これにより、前日の終業が遅くなった際に次の始業を遅らせやすくなり、労働者が疲れを取りやすい労働環境の構築を促しやすくなりました。

勤務間インターバル制度導入促進は2019年4月1日から施行されています。

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間との不合理な待遇差の禁止

正社員(正規雇用労働者)と同等の労働と責任を負っているにも関わらず給与や福利厚生などの待遇面で格差が生じている問題を解消するために、同一企業内において正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されました。

また、ただ禁止するだけではなく非正規雇用労働者の正社員化を支援するためのキャリアアップ助成金などの支援策も実施されており、非正規雇用を減らして正規雇用を増やす企業の取り組みを支援する制度も各種用意されています。

 

 

働き方改革関連法で罰則が適用されるケース

働き方改革関連法の改正において、いくつかの罰則が設けられています。

どのようなケースで罰則が適用されるのか、あらためて確認しましょう。

時間外労働が月100時間・複数月平均80時間を超えたとき

時間外労働と休日労働の合計が月100時間以上となったとき、またはその複数月(2~6ヶ月)平均のいずれかが80時間を超えたときは、罰則の対象となります(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)。

 

また36協定を結ばずに残業させたときや、36協定で定めた時間以上に労働させたときも、引き続き罰則対象となっています(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)。

年5日の有給休暇を取得させなかったとき

 

 

 

対象者に年5日の有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金が科されます。

高プロ対象者・新商品開発に携わる人へ医師の面接指導を怠ったとき

以下のケースでは、本人から申し出があるかどうかにかかわらず、医師との面談指導を実施する必要があります。

 

・新商品の開発業務に従事する労働者の時間外・休日労働が月100時間を超えたとき

・高度プロフェッショナル制度で勤務する労働者の健康管理時間が月100時間を超えたとき

 

法違反の場合は、50万円以下の罰金が科されます。

働き方改革関連法が2023年・2024年に適用される項目

働き方改革関連法のなかで、2023年以降に適用される項目について取り上げます。

2023年4月:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に(中小企業)

2023年4月1日以降、月60時間を超える時間外労働については、割増賃金率が25%から、大企業と同じ50%へ引き上げられます。

割増賃金率の引き上げに伴い、就業規則を変更する必要があります。

 

また現在も60時間を超えて残業する従業員がいるのであれば、時間外労働をできるだけ減らすよう、生産性を上げる取り組みが求められるでしょう。

厚生労働省には、働き方改革に取り組む中小企業に対し、費用の一部を助成する制度があります。システムや機器を導入することで残業時間を減らせる場合は、助成金の利用をおすすめします。

2024年4月:建設業・自動車運転業務等に規制開始

2024年4月1日から、時間外労働についての規制執行を猶予されていた一部の業種や事業に対し、規制が始まります。

 

・建設業

 

建設業については、災害の復旧・復興事業に関してのみ「月100時間未満・複数月平均80時間以内」の規制が免除されます。

 

上記以外の業務については、2024年4月1日以降、全面的に規制されます。

 

・自動車運転の業務

 

ドライバーの場合、2024年4月以降は時間外労働の上限が年間960時間までとなります。

 

通常適用されている、「月100時間未満・複数月平均80時間以内」と「月45時間を超える月は6ヶ月まで」の規制については、適用されません。

 

・鹿児島・沖縄における砂糖製造業

 

鹿児島・沖縄における砂糖製造業については、2024年4月1日から、一般企業と同じ条件で規制されます。

 

・医師

 

通常の医療機関では、年960時間・月100時間未満に規制される一方、長時間労働が必要な医師であると指定された場合は、上限は年1,860時間・月100時間未満となります。

 

健康を確保するための措置も義務化されます。

働き方改革関連法の内容は働き方改革実行計画に則っている

働き方改革関連法は働き方改革実行計画で定められた内容に基づいて決定されており、基本的には働き方改革実行計画の内容のうち法改正が必要な項目が働き方改革関連法に盛り込まれています。

そのため働き方改革実行計画の資料を閲覧することで働き方改革関連法を含む働き方改革の全容を知ることができます。

まとめ

働き方改革関連法は、働き方改革のうち法改正が必要になる項目に限られていますので、より詳しい働き方改革を知りたい場合は働き方改革実行計画の資料などを閲覧して、正しく理解し従業員が働きやすくなることで生産性の向上や雇用に役立てましょう。

※記載している内容は、掲載日時点のものです

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