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教育データの利活用で変わる学校教育:導入のステップと活用事例

2024-10-23

GIGAスクール構想により、すべての児童生徒に1人1台の端末が整備され、これを利用した学習が進んでいます。また、全国の学校の86.8%では校務システムが導入されており(※)、校務データも蓄積されています。

 

今後の教育現場に求められるのは、これらのデータをいかに効果的に活用するかです。

 

本記事では、教育データの活用を検討している教育委員会や学校関係者向けに、その効果や導入方法、具体的な事例を紹介します。

 

※令和5年3月時点 参考:次世代の校務デジタル化推進実証事業(令和6年度実施):文部科学省 (mext.go.jp)

教育データとは

教育データの利活用の目的は、個々人の様々な情報をデータ化して紐づけることで、教育のデジタル化を実現することにあります。

 

 

  • ・学習系
  • ・校務系
  • ・各種調査・アンケート

学習系

学習系の教育データとは、子どもの学習活動に関するデータのことです。具体的には、以下のようなデータがあります。

 

  • ・学習アプリの利用時間
  • ・回答の正誤
  • ・回答するまでにかかった時間
  • ・学習計画表とその達成状況
  • ・定期テストや単元テストの結果
  • ・全国学力調査
  • ・自治体ごとの学力調査

これらのデータを活用することで、子どもの学習状況や成果、理解度をより正確に把握することが可能です。

それにより発展的な学習や事情により学べなかった分野の復習など、個々人の都合に合わせた学びが実現できるようになります。

 

また転校・進学時に学びの記録をシームレスに引き継ぐことで校務にもメリットがあります。

校務系

校務系システムは、教職員の事務作業を効率化するためのシステムで、子どもに関連するデータとして次のようなものがあります。

 

  • ・氏名、住所、緊急連絡先などの個人情報
  • ・出席・欠席記録
  • ・健康情報
  • ・子どもの成績評価
  • ・保健室利用回数

 

これらのデータを適切に活用することで、学校全体やクラスの運営をよりスムーズに進め、得手不得手や特性などを把握した上で指導でき生徒の抱える問題や不安を早期に発見しやすくなります。

データを活用することで子どもの学習内容や学校での状況を家庭でも詳細に把握ができます。

各種調査・アンケート

各種調査・アンケートは、国や自治体が実施するテストや、子どもの心理面に関するアンケートのデータを指します。具体的には、以下のようなものです。

 

  • ・体力テスト
  • ・Q-U調査(学級満足度尺度調査)
  • ・こころの健康診断

特にQ-U調査では、子どもの学校生活における満足度を把握し、精神的な健康や学校環境の改善に役立てることができます。

教育データを利活用することの効果

教育データの利活用は、教育のさまざまな側面に大きな影響を与えます。ここでは、教育データをうまく活用することで実現できる主な効果について解説します。

個別最適化された学習の実現

教育データを分析することで、子どもの学習スタイルや理解度、得意分野と苦手分野を把握することが可能になります。これにより、従来では実現が難しかった個別最適化された学習を実現でき、学習成果が向上します。

 

  • ・児童生徒:自分の強みと弱みを把握し、効果的な復習が可能になります
  • ・保護者:子どもの学習状況を理解し、より適切な家庭学習をサポートできます
  • ・教職員:子どものつまずきやサポートが必要な部分を的確に把握し、適切な指導ができます

早期の問題発見と支援

教育データを利用することで、子どもが抱える学習上の困難を早期に発見でき、迅速な対応が可能です。複数の項目のデータから子どもの心理状態を把握し、問題が深刻化する前に適切な対処が可能になります。

教師の指導力の向上

学級全体の傾向や子どもたちの状況を把握し、それを他の教師と共有することで、指導方法を改善することができます。これにより、教師自身の指導力が向上し、教育の質も向上します。

教職員の業務効率化

クラス全体の理解度を一目で把握できるため、サポートが必要な子どもをすぐに特定できます。学級の子どもたちの状況も全体的に俯瞰できるため、声がけが必要な子どもを迅速に把握し、適切な対応が可能です。

教育政策や学校運営の改善

教育委員会は、学校ごとの成績傾向や学級運営の状況をデータから把握し、各学校に合わせた適切なサポートを提供できます。また、データ分析を基にした効果的な教育政策の策定にも役立ちます。

教育データ利活用のステップ

教育データを活用する際には、次のステップを踏んで進めていくと効果的です。

ステップ1.解決すべき課題を決める

まず、データを活用してどんな問題を解決したいのかを明確にしましょう。これは、データ活用を目的そのものにするのではなく、解決すべき課題に焦点を当てるために重要です。

 

たとえば、「不登校児童を減らす」や「教職員の業務を効率化する」といった目標を設定することで、データ活用の方向性が明確になります。

ステップ2.具体的な解決方法を書き出す

目標を実現するために、どのようなデータ活用方法が必要かを書き出します。たとえば、「教職員の業務を効率化する」なら、「学習ツールの進捗状況を1画面で確認できるしくみを作る」などの具体的な施策を検討します。

ステップ3.必要なデータを明確にする

ステップ2で挙げた解決方法に必要となるデータの種類を特定します。例えば、「声がけが必要な子どもを早期に発見する」ためには、以下のようなデータが必要です。

 

 

  • ・欠席日数
  • ・遅刻回数
  • ・保健室来室数、利用記録
  • ・アンケート結果
  • ・心の天気
  • ・Q-U調査

ステップ4.複数アプリのデータを統合・可視化できるしくみを導入する

多くの施策は、複数のアプリケーションから得たデータが必要になります。そのため、必要なデータを1つの画面に視覚的にまとめられるポータルシステムの導入を検討しましょう。

 

ポータルシステム導入には、次の2つの方法があります。

データ連携機能付きアプリの利用する

学習eポータルや校務支援システムの中には、データ連携機能が含まれたものがあります。これらを使ってデータを集約し、ダッシュボードで可視化することが可能です。

独自のデータ連携基盤システムの構築

より高度なカスタマイズが必要であれば、独自のデータ連携基盤を開発する方法もあります。構築には時間とコストがかかるものの、ニーズに合わせた柔軟なデータ活用が可能です。

教育データ利活用の事例

教育データを活用している自治体の事例を紹介します。

大阪市教育委員会:問題やつまずきのある子どもの早期発見

大阪市では、市内の小中学校5校に対し、学習系と校務系のデータを一つの画面にまとめた「ダッシュボード」システムを提供しました。これは、国の教育データ活用実証事業の一環です。

 

主な成果は次のとおりです。

 

  • ・学級全体の状況を把握し、声がけが必要な子どもを特定できる
  • ・子どもたちの習熟度を確認し、つまずいている子どものフォローが可能
  • ・他の教職員とデータを共有し、アドバイスをもらえる
  • ・養護教諭と担任の連携が強化

このシステムにより、フォローが必要な子どもの早期発見と、きめ細やかな指導が実現しました。

 

参考:「教育データ利活用による学校運営」~大阪市次世代学校支援事業~

鹿児島市教育委員会:個別最適化された学びの実現&教職員の業務支援

鹿児島市では、複数の学習アプリに効率的にアクセスできる「eポータルサイト」を導入しました。これにより、1度のログインで複数アプリの利用が可能となりました。

 

効果

  • ・子ども一人ひとりの学習傾向を把握し、個別最適化された学びを実現
  • ・学級別の取組状況の把握が可能
  • ・教員別のアプリ利用状況を把握し、効果的な施策を展開
  • ・教育委員会による学校別の支援が容易に
  • ・保護者も子どもの学習状況を確認でき、欠席連絡もデジタル化

 

eポータルサイトの導入により、学校全体の学習管理と支援が一層効果的に行われるようになりました。

 

参考:鹿児島市の取組と 学習eポータルの活用と可能性

渋谷区教育委員会:教職員の業務化と教育委員会による効果的な支援

渋谷区教育委員会では、学習系データや生活・心理面のデータを可視化するダッシュボードを導入しました。

 

効果

  • ・子どもの心情を定期的なアンケートでデータ化し、教員の経験に依存せずに問題を発見できる
  • ・中学校までの教育データを蓄積し、子どもの過去や個性を踏まえた指導が可能
  • ・データを使って声がけが必要な子どもを特定し、適切な支援が実現
  • ・ICT活用状況を把握し、教育委員会が効果的に学校へ支援

 

このダッシュボードにより、教職員間の情報共有が強化され、支援の質が向上しています。

 

参考:教育データ利活用の取組

松阪市教育委員会:データ分析による不登校の予兆発見

松阪市では、学習系とQ-U調査のデータを分析し、不登校の原因を調査しました。

 

仮説と結果

  • ・学校生活に満足していない子どもの割合が多いと不登校率が高くなる
  • ・平均正答率が低い学校ほど不登校率が高くなる
  • ・教職員が支援を受けられない学校ほど不登校率が高くなる

データ分析の結果、これらの仮説がデータで裏付けられ、今後の対応先に役立てられています。

 

参考:【資料2-4】令和5年度「教育データの効果的な分析活用に関する調査研究」事業について(三重県松阪市) (mext.go.jp)

横浜市教育委員会:全国最大規模のダッシュボードを構築

横浜市では、学習面と生活面のデータを1つの画面にまとめた「横浜St☆dy Navi」を2024年6月に導入しました。

 

特徴

  • ・26万人の児童生徒と2万人の教職員が利用する、全国最大規模の教育ダッシュボード
  • ・子ども用・教職員用・教育委員会用の3種類のダッシュボードを用意

 

このシステムにより、児童生徒の学習支援が大規模に展開されています。

 

参考:プレスリリース|内田洋行、神奈川県横浜市の全小・中・義務教育・特別支援学校496校へ、児童生徒26万人、教職員2万人が活用する学習支援システムを構築|内田洋行 (uchida.co.jp)

教育データ利活用における課題

教育データを活用する際には、以下のような課題が存在します。

閉鎖ネットワークにある校務システムとの連携の難しさ

教育データを効果的に活用するには、学習系と校務系のデータを統合する必要があります。しかし、校務支援システムが閉鎖ネットワークで運用されている場合、学習系アプリとネットワークが別れているため、データの連携が難しくなります。

 

この課題を解決するには、校務支援システムのアップデートやネットワーク環境の再構築が求められます。

自治体間でのデータ引き継ぎができていない

現在、システムの選定や導入は自治体ごとに異なるため、子どもが引っ越しや進学などで別の自治体の学校に転校する場合、教育データの引き継ぎが難しい状況にあります。今後、自治体間でスムーズにデータを引き渡す仕組みの整備が必要になります。

医療・福祉・行政系のデータとの連携

子どもに対してより適切に支援を行うには、教育機関以外が保有するデータとの連携も重要です。個人情報保護法を遵守しながら、以下のようなデータとの連携が必要になる可能性があります。

 

  • ・医療:予防接種履歴、健診履歴
  • ・福祉:障害種別、等級、利用中の支援サービス
  • ・行政:世帯構成、所得、生活保護受給有無

 

今後、これらのデータと連携するしくみを構築することで、より多面的な子ども支援が可能になるでしょう。

 

参照:教育データ利活用ロードマップ

まとめ

教育データの利活用は、子ども一人ひとりの学習を最適化し、教職員の業務効率化や学校運営の改善に大きな効果をもたらします。システム連携やデータ共有を進めることで、教育現場全体の質が向上するでしょう。

※記載している内容は、掲載日時点のものです

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