地震の増加や新型コロナウイルスの流行により、BCPの重要性が再認識されています。
本記事は、これからBCPを策定する方向けに、BCPの概要や策定ステップをわかりやすく解説します。
INDEX
- 1.BCPとは
- 2.BCPとBCMの違い
- 3.BCP導入のメリット
- 3.1.緊急事態の発生時に休業や事業縮小しなくても対応ができる
- 3.2.中核事業が可視化され想定外の危機に対応できる
- 3.3.顧客や取引先から信頼を得られる
- 4.BCPのデメリット・問題点
- 4.1.危機の増加への対応
- 4.2.作成に一定の労力がかかる
- 4.3.時間・コストがかかる
- 5.BCP策定のステップ1.「どの業務をどの稼働レベルでいつまでに復旧するのか」を決める
- 5.1.BCP対策のプロジェクトチームを結成
- 5.2.稼働すべき1つの事業を決める
- 5.3.事業の最低限の稼働レベルを決める
- 5.4.目標復旧時間を決める
- 6.BCP策定のステップ2.対策を検討する
- 6.1.中核事業を遂行する上で必要な資源をリストアップする
- 6.2.災害がボトルネック資源に与える影響を評価する
- 6.3.ボトルネック資源ごとに対応を検討する
- 6.4.事前対策を検討する
- 7.BCP策定ステップ3.「どうなったらBCPを発動し誰が指揮するのか」を決める
- 7.1.BCPの発動基準を決める
- 7.2.緊急時の組織体制を決める
- 7.3.文書化する
- 8.BCP策定ステップ4.定期的にテスト・更新する
- 8.1.作成したBCP対策の周知・訓練を実施する
- 8.2.定期的に検証し文書を更新する
- 9.国内企業におけるBCPの策定状況
- 9.1.BCPを策定している企業は17.7%
- 10.介護業では2024年からBCP策定が義務化
- 11.BCP策定の支援と補助金活用
- 11.1.BCP策定支援:独立行政法人 中小企業企業基盤整備機構
- 11.2.補助金:公益財団法人 東京都中小企業振興公社
- 11.3.補助金:山形県
- 12.BCP対策をせず災害などが発生した場合の損失額
- 13.クラウドSIMがBCPに役立つ理由
- 13.1.クラウドSIMはDoRACOONがおすすめ
BCPとは
BCPとは、Business Continuity Plan(事業継続計画)の略称です。
これまでに自然災害などの緊急事態に企業や団体が直面した際に、システム障害など危機的な状況に遭遇した時に損害を最小限に抑る、事業を継続させる、または事業を中断しても早期に復旧させるための計画書をさします。
特に日本では2011年の東日本大震災をきっかけにその重要性が注目されています。
BCPとBCMの違い
BCPと一緒に使われる言葉に、BCM(Business Continuity Management、(事業継続マネジメント)があります。
BCMは、直接的な防災や事業継続計画の策定から改善・運用までを総合的に考えるもので、非常事態そのものへの対策ではなく「対策手段一覧の運用プロセス」を管理することです。
BCPが「災害発生の事業継続」を考えるもの、被害を抑える手段であるのに対して、BCMは「計画・導入・運用・改善」などを考えるものであり、厳密には異なります。
BCPは作成して終わるのではなく、演習や見直しを通じて、現状にあったものに都度改訂していく必要があります。BCPを策定するときは、BCPを管理するBCMも意識しましょう。
BCP導入のメリット
BCPの導入メリットを見ていきましょう。
緊急事態の発生時に休業や事業縮小しなくても対応ができる
BCPを導入する大きなメリットは、災害やロックダウンなど緊急事態に直面し事業が中断しても、早期に事業を復旧することで廃業を防げる点です。
災害からの復旧が遅れると自社の製品やサービスを提供できず、顧客が離れてしまいます。
顧客が離れると、事業を縮小させたり従業員を解雇したりしなくてはならないかもしれません。BCPで廃業や事業の縮小を防ぐことで、従業員の雇用を守れます。
中核事業が可視化され想定外の危機に対応できる
シナリオにない想定外の危機が発生した場合でも、BCPを作成することで、危機に対応できる能力を養えます。
BCPを策定するときに、事業遂行にはどのような資源が必要なのか、資源を確保するにはどのような方法があるのか、またどの事業を優先して復旧・継続させるかなどを検討するからです。
BCPをまったく作成していない企業と比べると、経営戦略の立案や見直しがされ危機に対応するための土台がすでにできあがっているため、危機管理能力は非常に高いといえます。
顧客や取引先から信頼を得られる
BCPを作成することで、「緊急時の対策がしっかり整っている」と取引先や顧客からの信頼性を高めることに繋がります。
緊急事態が発生してサプライチェーンの寸断が生じると、取引先にも影響がおよぶため被災した際に事業を中断する期間が短いほど、取引先からの信頼性が高まり、企業イメージが向上します。
BCPのデメリット・問題点
BCPのデメリット・問題点についても触れていきます。
危機の増加への対応
発生が想定される危機の種類が増えたことで、企業が対応すべきシナリオの数は増加する傾向にあります。
<想定される危機の例>
- 自然災害(地震・津波・台風など)
- 電力の途絶
- 感染症の流行
- サイバー攻撃
- 戦争/テロ
- インフラ(ガス・水道・交通・通信・電話)の途絶
- 犯罪(バイトテロ)
ガイドラインでは、「災害ごとに被害リスクを評価する」とあるため、作成に多大な労力を要する可能性があります。
作成に一定の労力がかかる
BCPの作成には労力と時間がかかります。
「なければ困る」ものではないため、人員の少ない企業にとっては、作成作業が大きな負担となりやすいでしょう。
時間・コストがかかる
まず策定に時間がかかります。人件費やコンサルティング費用などの策定コストがかかり、有事の際に迅速な対応がとれるよう、社員を教育する時間やコストもかかります。
直接的に利益を生まないコストのため、特に中小企業にとってはコストの確保は課題となるでしょう。
また企業内の重要データを遠隔地にあるデータセンターなどで管理・保存することも検討するでしょう。データセンターの保守レベルによって費用に違いが出る場合もあるため、リスク分散にかかるコストも負担となります。
BCP策定のステップ1.「どの業務をどの稼働レベルでいつまでに復旧するのか」を決める
ここからは、BCPの作成ステップを解説します。
①BCP対策のプロジェクトチームを結成
BCP対策を策定するためのプロジェクトチームを作ります。事業継続や早期復旧の計画をまとめるBCPは社内のあらゆる部署に影響するため、各部署から人員を選出するとよいでしょう。
プロジェクトチームを取りまとめるのは、総務部になることが多いようです。総務部が事務局となり、プロジェクトチームの進捗管理や作業の調整などをおこないます。
②稼働すべき1つの事業を決める
災害が起こった場合、通常の稼働レベルで業務を遂行することはできません。
よってBCPでは、自社にとって優先すべき重要な事業はなにか、どこの部署かを決定します。
社会的に期待される役割や、最も売上が大きい事業から選ぶとよいでしょう。
この最も優先すべき事業を、「中核事業」と呼びます。
緊急時にその事業を早期に復旧させ、全体の損害を減らせるメリットがあります。
売上がもっとも高い事業、企業ブランディングに必要な事業、納期などの関係により、早期に復旧できなければ損害が大きくなる事業を優先に決めるとよいでしょう。
事業継続で優先するべきことは、最初に自社事業や業務をリストアップすることで全体像を把握しやすくなり、選びやすくなります。
③事業の最低限の稼働レベルを決める
復旧優先事業を決めたあとは、BCP対応にかかるリスクを理解しておく必要があります。
そのうえで1つの事業を決めたとしても、通常の稼働レベルで維持することは難しいでしょう。よって、最低限稼働すべきレベルを決めます。
たとえば、「主要顧客に限定して商品・サービスを納入する」などです。
リスクを把握し、分析することも重要です。具体的な状況を想定することで、計画もより具体的に詰めることができるようになります。
④目標復旧時間を決める
中核事業が停止したときに、取引先が待ってくれるであろう時間を想定します。
この時間を超えないように、「目標復旧時間」を設定しましょう。
どのタイミングでBCPを発動するのか、誰が行動するのかも細かく決めておくことも大切です。
事業停止による売上の減少に、資金が耐えられる期間も見積もっておく必要があります。
タイミングを見誤ると損害が大きくなる可能性があるため、注意して設定しておきたい点と言えます。
始動タイミング、組織体制、社員の動き等が曖昧だと現場が混乱し、復旧が遅くなってしまいます。緊急時でも冷静に対応できるように具体的に決めておきましょう。
BCP策定のステップ2.対策を検討する
ここからは、復旧に向けた目標・プランの作成をしていきます。
➀中核事業を遂行する上で必要な資源をリストアップする
中核事業を遂行する上で、利用している資源をリストアップしましょう。
事業を遂行する上で必要になる資源としては、以下の種類があります。
上記をリストアップしたら、その資源を以下に分類してください。
- ・無くても中核事業の継続には支障がない
- ・代替可能
- ・代替不可能
代替可能と代替不可能に該当するものは、事業の運営を左右する「ボトルネック資源」です。
②災害がボトルネック資源に与える影響を評価する
いくつかの災害を想定し、災害ごとにボトルネック資源に与える影響を評価します。
代表的な災害の種類は、以下です。
- ・地震
- ・水害(津波、台風、河川の氾濫)
- ・感染症の蔓延
地域ごとに災害のリスクは異なるため、社屋のある地域にあった災害を選択するようにしてください。
影響の大きさは、以下の2つから評価しましょう。
- ・資源が代替可能か不可能か
- ・目標時間までに復旧できる被害か、復旧に間に合わない程度の被害か
上記の評価により、ボトルネック資源の中で事業継続の要となる資源を、災害ごとに把握できます。
③ボトルネック資源ごとに対応を検討する
代替可能な資産の場合、どのように確保するのか手順を明確にしましょう。
たとえばパソコンが故障した場合、予備のパソコンをどこからどのように調達するのか、また調達にかかる見込み時間などを記載します。
④事前対策を検討する
災害により事業に大きな影響がある資源の中には、事前に対策を打てるものがあります。
たとえばバックアップデータをクラウドへ保管したり、基幹システムをクラウドへ移行したりすることで、社屋事態が失われる災害であっても、データやシステムを維持できます。
多くの場合、対策には多額の費用がかかるため、優先順位をつけて数年単位で取り組む必要があるでしょう。
BCP策定ステップ3.「どうなったらBCPを発動し誰が指揮するのか」を決める
➀BCPの発動基準を決める
「どのような場合にBCPを発動するか?」という基準を明確にしておきましょう。
災害の規模とボトルネック資産の被災状況から条件を設定しましょう。
②緊急時の組織体制を決める
BCP発動時の指揮系統や連絡手段を明確にします。
トップの人が被災した場合に備えて、予備の人員も確保しましょう。
③文書化する
検討したことを踏まえて、文書化します。
ひな形は、以下が参考になるでしょう。
上記ページの (2)BCP様式類(記入シート)からひな形を一括ダウンロードできます。
BCP策定ステップ4.定期的にテスト・更新する
➀作成したBCP対策の周知・訓練を実施する
実際にBCPを有効に活用するには、訓練を実施する必要があります。
以下の種類の訓練を組み合わせて、スケジュールを立てましょう。
作成したBCP対策は自社内でしっかりと周知し、繰り返し訓練することが大切です。計画を立てただけでは、いざというときに本当に対応できるのかわかりません。適宜社内研修や訓練を実施しましょう。
②定期的に検証し文書を更新する
BCP対策は定期的に、文書の内容を更新・改善する必要があります。組織体制の変更があったときにも中身を見直し、現状にあっているか確認しましょう。
実際に訓練してみると、不備がありプランに対応できない可能性や、時間の経過によって市場や売上推移に変化が起こり、優先すべき事業を変更する必要性が出てくるでしょう。
定期的に検証し、最適なプランを保ちましょう。
国内企業におけるBCPの策定状況
BCPを策定している企業の割合を見ていきましょう。
BCPを策定している企業は17.7%
帝国データバンクの調査「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2022年)」によると、BCPを策定した企業は17.7%にとどまっています
出典:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2022年)-帝国データバンク
企業規模別で見ると、大企業の導入率は33.7%となっているのに対し、中小企業は14.7%です。とくに中小企業において、BCPを未導入の企業が多くなっています。
介護業では2024年からBCP策定が義務化
介護業界では、2024年4月1日からBCPの策定が義務化されます。
感染症と自然災害の2つの脅威に備える必要があり、研修や訓練の実施、定期的な見直しを行うことが求められます。
2023年7~8月に実施された調査によると、約半数の事業所がBCPの策定中であることがわかりました。
引用:(1)介護サービス事業者における業務継続に向けた取組状況の把握及びICTの活用状況に関する調査研究事業(速報値)P2
2025年4月からは、BCP未策定の事業所に対し、基本報酬が最大3%減算される措置が導入されます。この措置を避けるためには、2025年3月31日までにBCPを策定する必要があります。
BCP策定の支援と補助金活用
BCP策定をどう始めればいいのかわからない方は、支援制度を利用することがおすすめです。
公的機関や自治体では、専門家を無料で派遣してくれる制度があり、この制度を利用することで、専門家と相談しながらBCPの策定を行えます。
さらに、BCPの策定に必要な物品を購入する場合、自治体が一部経費を助成してくれる場合があります。
事業所のある自治体における最新の支援情報や補助金については、J-Net21の支援情報ヘッドラインで検索してみましょう。ここでは、いくつかの公的な策定支援制度や補助金制度を紹介します。
BCP策定支援:独立行政法人 中小企業企業基盤整備機構
中小企業基盤整備機構では、BCP策定のための専門家派遣支援を提供しています。
企業は費用を負担せず、1回1~2時間の専門家による支援を2回受けることができます。令和5年度の受付は終了し、令和6年度の案内は公式ウェブサイトで行われる予定です。
URL:https://kyoujinnka.smrj.go.jp/handsonr5/
補助金:公益財団法人 東京都中小企業振興公社
東京都中小企業振興公社では、東京都に事業所のある中小企業に対し、BCPの実践にかかる経費のうち2分の1~3分の2を助成してくれます。
令和5年度分の受付は終了しましたが、令和6年度も実施する可能性があるため、ウェブサイトをチェックしましょう。
URL:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/bcp.html
補助金:山形県
山形県では、県内の中小企業・小規模事業者に対し、BCP策定に基づく防災設備等の導入経費の一部を補助する事業が行われています。
受付期間は、令和6年4月1日~令和6年4月30日までの1ヶ月間となっています。
BCP対策をせず災害などが発生した場合の損失額
BCP対策を怠ると、災害が発生した場合には大きな損失が生じます。
たとえば、通常時の売上高が1ヶ月あたり4億9400万円の企業が、1ヶ月間事業を停止した場合を考えてみましょう。
(単位:百万円)
出典:5.1.3 実例による事業中断時の損益とキャッシュフローの対比-中小企業庁
事業が停止すると売上高は0になり、営業利益は大幅にマイナスになります。
とくに固定費は事業中断時でも変わらないため、支出は減価償却費を除く9500万円となり、キャッシュフローは△9,500万円と悪化します。
被災状況によっては、設備や社屋の修復費用が派生し、キャッシュフローがさらに悪化する可能性もあるでしょう。BCP対策を怠ることは、企業にとって深刻な損失をもたらすことがわかります。
クラウドSIMがBCPに役立つ理由
業務を遂行する上で欠かせない資源のひとつは、インターネット通信環境です。
インターネット回線の代替案としておすすめなのは、クラウドSIMです。
クラウドSIMとは、マルチキャリア対応の4G LTE回線を利用できるデータ通信です。
複数のキャリアのうちどこかで通信障害が発生しても、利用できるキャリアの回線で通信が可能です。
災害が発生した場合、クラウドSIM端末を持っていれば、1つのキャリアで通信障害が起きたとしても他のキャリアに切り替えて通信できるようになります。
クラウドSIMはDoRACOONがおすすめ
クラウドSIMの中でも、おすすめなのは法人専用のDoRACOONです。
休止プラン(550円/月)があるため、利用していない期間は通信料を抑えて運用できます。
法人専用なので利用者が限定され、通信品質が高い点も優れています。
※記載している内容は、掲載日時点のものです
2023-9-20
2023-5-16
2024-4-24
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