2024年に登場した無線LAN技術の最新規格であるWiFi7は、無線通信に大きな変革をもたらすと期待されています。本記事では、WiFi7の特徴や優れた点について詳しく解説します。
INDEX
- 1.WiFi7とは
- 2.WiFi7の優れている点
- 2.1.異なる周波数領域帯をシームレスに利用できる
- 2.2.最大320MHz幅で通信できる
- 2.3.伝送効率が20%向上
- 2.4.WiFi7までのこれまで
- 3.WiFi7対応ルーター/携帯端末一覧
- 3.1.対応ルーター
- 3.2.対応端末
- 3.3.PCなら外付けの無線LAN子機で対応可能
- 4.WiFi7対応ルーターを選ぶポイント
- 4.1.無線LANルーターと端末の両方が必要
- 4.2.アンテナ数
- 4.3.離れた場所での利用にはメッシュWiFiがおすすめ
- 4.4.NTT系回線を利用する場合はプロバイダ推奨の無線LANルーターを選択
- 4.5.WiFiだけが速くても意味がない
- 5.ビジネスにWiFi7はまだはやい?
- 6.「マルチキャリア」という選択肢
WiFi7とは
WiFi7は、無線通信技術におけるWiFi 6/6Eに次ぐ第7世代の規格です。
米国電子学会(IEEE:アイトリプルイー)によって2024年12月に策定される見込みです。
正式な規格名の「IEEE 802.11be Extremely High Throughput (EHT)」とも呼ばれ、2.4GHz・5GHz・6GHzの3帯域全てを利用できます。
各国の通信機器メーカーによる業界団体であるWiFi Allianceは、WiFi7の規格を満たす無線LAN機器に対して認定を付与する「WiFi CERTIFIED 7」を、2024年1月から開始しました。
現在、日本国内では3機種の無線LANルーターがWiFi7の認定を受けており、2024年中にさらにWiFi7対応機器が増える見込みです。
WiFi7の優れている点
WiFi7は旧規格のWiFiと比べてどのような点が優れているのでしょうか。ここでは、3つの特徴について解説します。
異なる周波数領域帯をシームレスに利用できる
WiFi7では、異なる周波数帯をシームレスに利用できるようになりました。これは、マルチリンク機能(MLO:Multi Link Operation)によって実現されています。
従来のWiFiでは、2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯のいずれか1つを選択して通信する必要がありました。この方法では、利用する周波数帯が混雑していても、他の周波数帯に自動で切り替えられることはありません。
しかし、WiFi7のマルチリンク機能では、2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯の周波数帯がそれぞれ伝送路(リンク)を確立します。確立された複数のリンクがお互いに連携し協調することで、効率の良い伝送が行えるようになりました。これはわかりやすく例えると、「複数の配送事業者がお互いに連携し合う状態」と考えることができます。
たとえば、3社の中からどれか1社を選択して荷物を預けます。A社を使って荷物を送る場合、A社の受付が混雑していても、利用する会社を選び直さない限り、B社またはC社を利用することはできません。これが従来のWiFiのしくみです。マルチリンク機能では、A社・B社・C社がお互いに連携し合います。
それまで各企業は自社の従業員しか利用できませんでしたが、3社の人員を活用できるようになりました。人員を効率的に利用することで、荷物を素早く届けることができるようになるでしょう。
また、A社の受付が立て込んでいる場合、荷物の受付は自動的に人員の余裕があるB社に切り替えられます。これによって、待ち時間も低減されます。
このように、マルチリンク機能を利用することで、速度が向上し遅延の少ない通信を実現できるのです。
最大320MHz幅で通信できる
WiFi7では、最大320MHz幅のチャネルを利用できるようになりました。これは、WiFi6/6EやWiFi5の2倍に相当します。
帯域幅はよく道路の幅に例えられ、、道路の幅が広ければ、より多くの車が同時に通行できるのと同様に、広い帯域幅ではより多くのデータを同時に通信できます。
より柔軟なチャンネルの割り当てが可能となり無線干渉を回避できるようになります。
伝送効率が20%向上
WiFi7では、一度に送信できるデータ量が12ビットに拡大しました。これはWiFi6/6Eの1.2倍、WiFi5の1.5倍に相当します。
WiFiでは、一度により多くの情報を伝送するために、電波の「波の形」と「大きさ」を変化させる仕組みを用いています。
WiFi5では256個のシンボル(8ビット)、WiFi6/6Eでは1024個のシンボル(10ビット)を送信できましたが、WiFi7では、波の形と大きさを各64段階に区別することで、同時に4096個のシンボル(12ビット)を送信できるようになりました。これにより、伝送効率が20%向上しました。
これは、1枚の原稿用紙に書くことのできる文字数に例えることができ、文字の大きさを小さくすることで、1枚あたりで伝えられる情報量が増えるのと同様に、送るデータを密度の高い状態にすることで、より多くのデータを一度に送信できるようになったのです。
WiFi7までのこれまで
WiFi7とこれまでの規格を以下の表にまとめました。
(※)最大通信速度(理論値)を最大ストリーム数で割り、2を乗算したもの。最大ストリーム数はWiFi4が4本、WiFi5/WiFi6/WiFi6Eが8本、WiFi7が16本です
WiFiは世代が進むにつれて最大通信速度が向上しています。
WiFi7の2ストリームあたりの最大通信速度は5.8Gbpsであり、WiFi6/6Eの2.4倍、WiFi5の3.4倍に達します。仮に理論値の半分程度しか速度が出なかったとしても、3Gbps程度の速度が出る計算となり、これまで以上に高速な通信が期待できるでしょう。
WiFi7対応ルーター/携帯端末一覧
対応ルーター
2024年3月現在、日本国内でWiFi7に対応した無線LANルーターは、以下のとおりまだ少数です。
・バッファロー WXR18000BE10P
・TP-LINK BE22000
・TP-LINK BE19000
これらの機種はいずれも5万円以上と、無線LANルーターとしては高価格帯に位置しています。
参考:Product Finder Results | WiFi Alliance
対応端末
2024年3月現在、日本国内でWiFi7に対応しているデバイス(PC、スマートフォン、タブレット)はまだ販売されていないため、今後の新機種の発売に期待しましょう。
PCなら外付けの無線LAN子機で対応可能
最新のWiFiに対応していないPCでも、外付けの無線LAN子機(無線LANアダプタ)を接続することで対応できます。
この方法を利用すると、新しいパソコンを購入する必要がなく、コストを節約できます。
現時点ではWiFi7対応の無線LAN子機はまだ市場に出回っていませんが、今後の発売が期待されます。
WiFi7対応ルーターを選ぶポイント
WiFi7対応ルーターを選ぶ際に留意すべきポイントを解説します。
無線LANルーターと端末の両方が必要
WiFi7の能力を発揮するためには、規格に対応したルーターとデバイスが必要です。ルーターがWiFi7に対応していても、接続するスマホなどが対応していなければ、今までと変化はありません。その逆の場合も同様です。
アンテナ数
アンテナ数は、無線LANルーターの重要な要素の一つです。「2×2」「4×4」などの表記で示され、これは送信側と受信側のそれぞれのアンテナ数を表します。
現代のスマートフォンには通常2本のアンテナが内蔵されています。これらのアンテナと無線ルーター側の複数のアンテナを組み合わせることで、伝送路(ストリーム)を複数もつことができ、通信速度の向上を計っているのです。
多くの端末を同時に利用する場合は、アンテナ数の多い無線LANルーターを選択することで、同時利用時の速度低下を防ぐことができます。一方で、同時に利用する端末数が少ない場合は、1台あたりのアンテナ数が最大でも2本ということを考慮し、適切なアンテナ数のものを選ぶことが重要です。
アンテナが多すぎても問題はありせんが、機器が高性能になるため価格も高くなります。そのため、利用する端末の台数に応じて適切なアンテナ数の製品を選択しましょう。
離れた場所での利用にはメッシュWiFiがおすすめ
WiFi7の注目すべき機能の一つは320MHz幅での高速通信ですが、これは6GHz帯を利用する場合にのみ利用できます。
無線LANルーターから見通しの悪い場所では、6GHz帯の電波は弱まるため、無線LANルーターから離れた場所では高速通信を十分に利用できない可能性があります。
無線LANルーターから離れた場所で6GHz帯を利用するには、無線ネットワークのカバレッジを広げる「メッシュWiFi」がおすすめです。
複数の無線アクセスポイントを導入する必要があり、それに伴うコストがかかりますが、WiFi7の機能を最大限に活用するためには、検討する価値があります。
NTT系回線を利用する場合はプロバイダ推奨の無線LANルーターを選択
フレッツ光や光コラボを利用されている場合は、プロバイダが推奨している無線LANルーターを選ぶことが重要です。
NTT系の回線では、「IPv4 over IPv6」という技術を利用してIPv6経由でIPv4サイトを見ることができますが、採用している規格がプロバイダによって異なります。そのため、対応していないルーターを利用すると、速度が低下する可能性があります。
プロバイダの公式サイトやメーカーのWebサイトを確認し、推奨されている機種を選択するようにしましょう。
WiFiだけが速くても意味がない
WiFi7の速度が活かされるのは、ルーターの先のインターネット回線が速い場合です。回線の速度が遅ければ、WiFi7の性能をフルに発揮することはできません。10ギガ回線などの安定した高速通信が提供されていれば問題ありませんが、地域や建物などの事情で通信インフラが整っていない場合は、WiFi7にするにはまだ早いでしょう。
ビジネスにWiFi7はまだはやい?
2024年3月現在、国内向けのPC、スマートフォン、タブレットなどの端末は、WiFi7に対応していません。
WiFi7対応ルーターを用意してもそれに対応する端末が手に入らなければ、WiFi7を利用することはできません。
そのため現段階では、企業はあえてWiFi7対応のものにリプレイスする必要はまだありません。あわてて最新のルーター等を購入しても、スペックをフルで生かせないためです。
さらに、WiFi7ネットワークの構築に関する経験が豊富なベンダーが少なく、トラブルが発生した場合に迅速に修復できないリスクもあります。
法人がWiFi7を導入する最適なタイミングは、WiFi7が市場で一定程度普及してからがよいでしょう。
「マルチキャリア」という選択肢
全て最新の通信規格や通信速度が早ければ快適にデータの送受信やインターネットができるわけではありません。
エリアや建物などの問題で、光回線の工事が難しいケースもあります。また社外の取引先などが、携帯電話の電波の届きにくいルーラルエリアにあるという状況も考えられます。
その場合に優先すべきなのは、先ず何よりも「どんな環境でもインターネットに接続できること」です。
そこで有効な選択肢となるのが、「マルチキャリア」という考え方です。
複数のキャリアから快適に通信できる回線を自動的に選択する「クラウドSIM」のサービスが、注目を集めています。
「マルチキャリア」であれば大手キャリアのうち1つのキャリアと繋がれば、通信を行うことが可能です。もし1つのキャリアの通信網に障害が起こった場合でも、別のキャリアに接続できるため、つながらないというリスクを軽減できます。
対応ルーターや対応端末が少ないなどの理由でWiFi7をフルスペックが生かせない現状では、一般的な企業にとって「とりあえず通信速度が早い、最新規格だから」だけで飛びつくのはオーバースペックです。情報収集をして自社の環境に合うものを選定しましょう。
※記載している内容は、掲載日時点のものです
2023-9-20
2023-5-16
2024-4-24
-
# お役立ち資料# 回線速度# 不正アクセス# 電子帳簿保存法# eSIM対応機種# モバイルデバイス管理# ネットワーク構築# VPNとは# 工場wifi# 目安# S20i# BI# ICT技術# 社内ネットワーク構築方法# モバイルデータ# 働き方改革# jetfon# セットレンタル# BIツール# マルチキャリア
2023-07-12
2023-06-26
2024-03-18