クラウドPBXとは、内線電話のための設備をクラウド化し、どこにいてもスマートフォンから代表電話で発着信できる電話回線サービスのことです。
運用の簡素化やリモートワークへの対応などの面でメリットがありますが、インターネット環境に左右されやすいなどのデメリットもあります。特にリモートワークを導入しようと考えている企業には有効です。
クラウドPBXとは具体的にどのようなものなのか、機能面を含め解説します。
INDEX
- 1.クラウドPBXとは
- 1.1.スマートフォンを内線子機として使用できる
- 1.2.外出先の社員に内線を使って通話できる
- 1.3.外出先から会社の代表番号を使って発信できる
- 1.4.クラウドPBXとオンプレミスPBXの違い
- 2.クラウドPBXのメリット
- 2.1.PBX / ビジネスフォン主装置の設置が不要
- 2.2.設備を管理する必要がない
- 2.3.複数拠点のPBX/ビジネスフォン主装置をクラウド化できる
- 2.4.災害など緊急時にも使える
- 2.5.機器の更新が不要
- 2.6.短期間で拡張できる
- 3.クラウドPBXのデメリット
- 3.1.市外局番に対応していない場合がある
- 3.2.通信品質がインターネット環境に影響されやすい
- 3.3月額料金が発生する
- 3.4.セキュリティリスクがある
- 4.クラウドPBXにかかるコスト
- 4.1.初期費用
- 4.2.月額費用
- 5.クラウドPBXの選び方
- 5.1.機能・サービスや通話の品質は十分か
- 5.2.コストが相当か
- 5.3.サポート体制が備わっているか
- 6.クラウドPBXの利用が向いている企業
- 6.1.在宅勤務者が多い企業
- 6.2.外出先の社員へ電話を取り次ぐことが多い企業
- 6.3.創業したばかりの企業
- 7.クラウドPBXの利用が向かない企業
- 7.1.内線を利用する場面がない
- 7.2.オフィス外で働く人や在宅勤務者が少ない
- 7.3.外出している社員に電話を取り次ぐケースが少ない
- 8.クラウドPBXでニューノーマルに対応しよう
クラウドPBXとは
クラウドPBXとは、PBX機能をクラウド上で提供するサービスで、
インターネットを使った電話回線サービスのことを指します。
また「PBX」とは設置された多数の電話機を、効率よく利用するための装置のことを指し、設置することで、外部との電話のやり取り(外線)や、内部での電話のやり取り(内線)のやり取りを行います。
独自の電話網を構築するための設備のことでPBXを使用すると、公衆網を介さなくても社内間でプライベートな通話(内線)ができます。
クラウドPBXでは、オフィス内に電話設備を設置することなく、PBX機能を利用できます。
インターネット回線を利用し、異なる場所にあるオフィスや、工場、自宅においたPCや社用スマホで、外線や内線をつなぐことが可能です。
スマートフォンを内線子機として使用できる
従来、内線を利用したり会社の代表電話番号で外部に電話をかけたりするときは、業務用の置き型電話やコードレス電話機を利用する必要がありました。
ですが最新のPBXでは、それらの電話機をスマートフォンに置き換えられます。
スマートフォンを各社員に貸与している場合、多くのビジネスフォンを設置することなくスマートフォンに一本化できるでしょう。
導入・維持コストを削減できますし、デスク上のスペースも有効活用できます。
外出先の社員に内線を使って通話できる
最新のPBXでは、外出先の社員に対しても、内線機能を使って呼び出せます。
外線を使わないため無料で通話でき、それまで外線を使って通話していたコストを、削減できるでしょう。
また在宅勤務者に連絡する場合も、無料で通話できるので便利です。
外出先から会社の代表番号を使って発信できる
置き型電話から外線を利用するときと同じ感覚で、外出先でも、スマートフォンから会社の代表番号を使って発信できます。
携帯電話番号を取引先に知られたくない場合や、在宅勤務者が外部に電話する場面で便利です。
スマートフォンに搭載されている携帯電話番号ももちろん使えるため、不便になることはありません。
スマートフォンから利用できる電話番号が、「携帯電話番号・内線電話・会社の代表電話」の3つに増えるイメージです。
クラウドPBXとオンプレミスPBXの違い
オンプレミスPBXとクラウドPBXで異なる点は、「PBX設備がオフィス内にあるかどうか」です。機能はほぼ共通しており、優劣はありません。
ただし近頃は、ファイルサーバーや業務アプリケーション等、さまざまな分野においてクラウド化が進んでいます。
自社内に設備を設置するオンプレミスは、テレワークが推進される昨今において、オフィス内に機器を設置すること自体が、時代にそぐわない面があります。
「設備をできるだけ保有せず、会社をスリム化する」流れは加速しており、電話設備においてもクラウド化が進んでいます。
クラウドPBXのメリット
PBXを、外部の事業者のクラウドサービスに移行すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここではクラウドPBXがもたらすメリットを見ていきます。
PBX / ビジネスフォン主装置の設置が不要
クラウドPBXを利用すると、それまで自社内に設置が必要だったビジネスフォン主装置やPBX設備が不要になります。
PBXの機能をクラウド上(インターネット上)のサーバーが提供するためハードウェアも回線工事も必要ありません。
自社で専用の装置を購入・設置する必要がないため、従来のビジネスフォンと比べて圧倒的に初期費用を抑えることが可能です。
設置スペースを削減でき、社内のスペースを有効活用できるでしょう。
設備を管理する必要がない
PBX設備の保守は、サービスを提供する事業者によって行われます。
自社内に設置しているPBXが故障した場合、保守会社へ連絡し修理を依頼しなければなりませんが、そのような管理コストが不要になります。
複数拠点のPBX/ビジネスフォン主装置をクラウド化できる
拠点が複数あり、それぞれにPBXまたはビジネスフォン主装置を設置していた場合、それらをまとめてクラウド化できます。
設置スペースや管理コストを削減できるでしょう。
災害など緊急時にも使える
自社内には物理的な設備が存在せずクラウド上で管理されているため、地震や浸水等、災害による物理的な機器の破損などによって、電話機能が停止したり重要なデータが破損したりせず使えます。
社員がオフィスに出勤できない状況でも、自宅で会社の電話を受けかけでき電話帳データなどはクラウド上に保存されているため、いつでもどこでも確認することができます。
ただし、サービス提供側が機能を停止する可能性はあります。
サービス事業者における災害時のバックアップ体制については、契約前に確認したほうがよいでしょう。
機器の更新が不要
PBXやビジネスフォン主装置、電話機一式は、ある程度年数がたてば設備を買い替えたり、リース契約したりする必要があります。
クラウドPBXはサービスとして提供されるので、買い替えの必要がなく、更新期間を管理する必要がありません。
短期間で拡張できる
クラウドPBXは、インターネットを通じて発注・契約できるので、いちいち業者を呼んで打ち合わせしたり工事を依頼したりする手間がかかりません。
そのため契約台数の増減がしやすく、ライセンスを追加するだけで簡単に使用できます。
機能を拡張したいときもインターネットを通じて行えるので、スピーディーに機能が提供されます。
クラウドPBXのデメリット
クラウドPBXのデメリットについて詳しく触れていきます。
市外局番に対応していない場合がある
固定電話の番号ポータビリティに関しては、制約が存在します。
クラウドPBXへ移行する際の現行の電話業者や移行先の業者によっては、既存の電話番号をそのまま利用できない場合があります。
移行が可能なのは、NTTで取得したアナログ電話番号またはひかり電話の番号、あるいはNTTで取得後他社に移行した番号のみです。
移行が難しい場合は、新たな電話番号を取得することも検討されます。
通信品質がインターネット環境に影響されやすい
クラウドPBXはインターネットを介した電話システムであるため、通信状況や社内ネットワークの品質に左右され、音声品質が低下する可能性があります。
導入時には、無線LAN(WiFi)やインターネット回線の状況を確認し、最適な環境を整えることが重要です。
月額料金が発生する
クラウドPBXは初期費用がほとんどかからない反面、利用期間中は永久に月額料金が発生します。
これに対して、オンプレミス型のPBXは買い取りすればランニングコストが発生しませんし、リース契約の場合でもリース期間が満了すれば少ないコストで利用可能です。
これまでオンプレミス型のPBXを長期間利用していた企業にとっては、コストアップの可能性があります。
セキュリティリスクがある
クラウドPBXでは主装置に対してインターネット経由でアクセスするため、管理者IDやパスワードが漏洩すると不正アクセスされるリスクがあります。
不正アクセスによって、第三者が知らないうちに端末を登録し、会社の電話番号が悪用される可能性も考えられます。
セキュリティ対策として、ログイン時に二要素認証を設定することが重要です。
クラウドPBXにかかるコスト
クラウドPBXを利用する際には、初期費用と月額費用の両方が発生します。
初期費用
初期費用で発生するものは、主に次の2つです。
- ・工事費
- ・通信機器
工事費は、インフラの整備や設備の導入に伴う費用です。
通信機器は、クラウドPBXに対応した電話機やスマートフォンなどの端末代が含まれます。
クラウドPBXでは主装置を購入しないため、従来型のオンプレミス型PBXに比べて初期費用を抑えられます。
月額費用
月額費用で発生するものは、主に次の2つです。
- ・プランの利用料金
- ・オプション料金
利用プランは電話を利用する人数や機能の範囲によって異なりますので、自社のニーズに合ったプランを選択することが重要です。
オプションについても検討し、必要な機能やサービスが含まれているかどうかを確認しましょう。不要なオプションが選択されていないかをチェックすることも大切です。
クラウドPBXの選び方
クラウドPBXを選ぶ際の重要なポイントについて解説します。
機能・サービスや通話の品質は十分か
サービスが提供する機能が自社のニーズに合致しているか確認しましょう。
たとえば、電話番号の移行や通話の録音、柔軟なサービス拡張などが挙げられます。
通話品質にも注目し、クラウドPBXの利用によって通信の遮断や音質低下がないか確認しましょう。
コストが相当か
予算内で利用できるかどうかを確認しましょう。
初期費用だけでなく、月額費用や中長期のトータルコストを比較検討します。
利用量に応じて発生する追加費用や機能を拡張したときの追加費用についても考慮しましょう。
サポート体制が備わっているか
適切で迅速なサポートが得られるかどうかを確認しましょう。
サポートの受付時間や対応可能な内容、問題解決までの所要時間を確認することで、トラブルが生じた際も安心して利用できるかどうかがわかります。
クラウドPBXの利用が向いている企業
では、クラウドPBXの利用が向いている企業はどのような特徴があるのでしょうか。
拠点が多い企業や複数の電話機を使用している、社員の外出が多いなどの場合は導入を検討してもよいでしょう。
クラウドPBXの利用が向いている企業の特徴を見ていきましょう。
在宅勤務者が多い企業
在宅勤務者が多い企業では、クラウドPBXがおすすめです。
会社の代表電話にかかってきた電話を在宅勤務者のスマートフォンで受けたり、在宅勤務者のスマートフォンから会社の電話番号を使って発信できたりします。
オフィスにいるときと同じように発着信できるため、手間がかかりません。
外出先の社員へ電話を取り次ぐことが多い企業
外出先の社員へ電話を取り次ぐことが多い企業にも、クラウドPBXがおすすめです。
伝言や電話番号をメールしたり、メモを机に置いたりしていることが多いと思いますが、その手間が不要になります。
まるで社内にいるかのように、外出している社員のスマートフォンを内線から呼び出せます。
取次の手間が減り、本来業務に集中できるようになるでしょう。
創業したばかりの企業
創業したばかりの企業にも、クラウドPBXがおすすめです。
スマートフォンさえあれば、会社の代表電話番号を使って発着信できるため、手軽に導入できます。
コストを抑えつつ早く事業を始める必要があるベンチャー企業や社員の人数が増えたり拠点が増えたりした場合も、クラウドPBXであれば短納期で拡張できるので、事業のスピードアップが図れるでしょう。
クラウドPBXの利用が向かない企業
クラウドPBXの利用が向いていない企業もあります。
PBXを必要としない企業では、「主装置+ビジネスフォン」の導入で問題ないでしょう。
内線を利用する場面がない
次の2つに当てはまる企業は内線を利用する場面がなく、PBXを必要としません。
・拠点が一つしかない
・見渡す範囲に社員がいて電話取次ぎの際に声がけできる
オフィス外で働く人や在宅勤務者が少ない
オフィスの外で働く従業員が少ない場合、外線を使って取り次ぎする場面も少ないでしょう。
在宅勤務者の割合が少ない企業も、外線を使って連絡する頻度は少ないと思われます。
外出している社員に電話を取り次ぐケースが少ない
外出している社員に電話を取り次ぐ頻度が少ない場合、PBXの導入はコストに見合わない可能性が高いです。
ただし外出している社員が携帯電話から顧客と直接連絡をとっている場合、会社の代表電話番号から電話する方が適切な場合もあります。
携帯電話で直接顧客とやり取りしている業務がある場合、携帯電話番号が顧客に通知されても問題ないかどうかを確認しましょう。
クラウドPBXでニューノーマルに対応しよう
クラウドPBXを利用することで、どこでも働ける環境を実現できます。
クラウドPBXサービスを提供する企業は多数ありますが、バックボーンのしっかりしている企業がおすすめです。
業務内容や従業員の勤務形態によって効果の有無も変わります。導入時にはコストだけでなく、機能や使い方も踏まえたうえで検討することが大切です。
電話設備の更新を控えているのであれば、ぜひクラウドPBXを検討してみてください。
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